研究課題
側頭葉てんかんの一因として皮質異形性が注目されている。私たちはこれまでの研究で、ラット胎児大脳に寒冷傷害を加えることで大脳皮質に局所皮質異形性を作成することに成功し、電気キンドリング刺激により海馬のてんかん原性獲得が早まることを証明した。本研究ではこのモデルを用いて側頭葉てんかんが発生する機序と、側頭葉てんかんと皮質異形性との関連を明らかにすることを目的とした。そのためにこの多発性皮質異形性モデルを用いて、自発的側頭葉てんかんが生じるか否かを長時間脳波ビデオモニタリングで検討するとともに、この機序を免疫組織学的、神経生化学的手法により解明する。皮質異形性がヒトでみられる海馬硬化を来すことを証明する。平成25年度に行った実験は、皮質異形性ラットの脳波・ビデオ記録の解析と、各種免疫染色 (NMDAR1、NMDAR2A、 NMDAR2B、 GAD65/67、 GLAST、 GLT-1) によるNMDA受容体、GABAニューロン、グルタミン酸トランスポーターの変化を観察すると共に、画像処理ソフトを用いたSemi-quantitative densitometric analysisを用いて定量を行った。多発皮質異形性ラット群の7匹中5匹 (71.4%) に出生45日以上の時点で、計30回の自発てんかん発作の出現を認めた 。発作波は必ず両側海馬から生じ平均持続時間は58 ± 38.9 秒 (±S.D.) であった。海馬ではGAD64/67に差はなかったが、それ以外のNMDA受容体とグルタミン酸トランスポーターの染色性は著明に上昇しており、グルタミン酸を介した神経興奮活動の上昇が示唆された。また皮質ではNMDA受容体とグルタミン酸トランスポーターの関係は海馬と同様であったが、GAD64/67に関しては異形性群で減少しており、GABAニューロンの活動性が低下していることが示唆された。
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