研究課題/領域番号 |
23500501
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中山 ゆかり(六車ゆかり) 東海大学, 医学部, 特定研究員 (80398750)
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研究分担者 |
安藤 潔 東海大学, 医学部, 教授 (70176014)
八幡 崇 東海大学, 医学部, 講師 (10398753)
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キーワード | 多発性骨髄腫 / Notch / 骨髄微小環境 |
研究概要 |
本研究の目的は、骨髄環境をヒト化した免疫不全マウス(NOGJ)にヒト多発性骨髄腫細胞を移植して作成したモデルマウスを利用して、新薬開発への礎となる知見を得ることである。 昨年度の実験から、NOGJマウスで骨髄腫細胞の生着が顕著に高いことが明らかとなったが、それがNotchシグナルの直接的な作用によるものか、骨吸収亢進による骨髄環境の変化によるものかは不明であった。それを踏まえて以下の実験を行った。まず、骨髄腫細胞株の移植後3週目から多発性骨髄腫の分子標的薬であるボルテゾミブをマウスに投与すると、NOGモデルではマウスの骨髄内の骨髄腫細胞が薬剤非投与群の10~20分の1以下になるのに対し、NOGJモデルでは、個体差はあるけれども薬剤非投与群の2分の1から5分の1程度にしかならなかった。つまり、NOGJマウスの骨髄環境は、骨髄腫細胞の生着を促すばかりでなく、薬剤抵抗性をもサポートすることが明らかとなった。 次に、上記多発性骨髄腫モデルマウスに骨吸収抑制剤の1種であるアレンドロネートを投与すると、いずれのモデルマウスの場合も薬剤投与群で腫瘍負荷が軽くなったが、NOGJマウスの方でその効果が大きいことがわかった。このことから、骨吸収亢進による骨髄環境の変化がNOGJマウスにおける骨髄腫細胞の生着促進の要因の一つであることがうかがえる。 また、Jagged1を発現する骨髄ストローマ細胞と通常のストローマ細胞と骨髄腫細胞を共培養してin vitroの薬剤感受性試験を行ってみると、Jagged1発現ストローマ細胞上で、細胞がより生き残っていた。 これらの結果から、NOGJマウスにおける骨髄腫細胞の生着促進および薬剤抵抗性はNotchシグナルと骨髄環境の変化の両方によるものと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は、多発性骨髄腫患者の検体を利用して、個別化したヒト骨髄腫モデルを確立し、個々の患者の病態、薬剤耐性を含む、を解析することによって、多発性骨髄腫の新たな治療方法を開拓することである。しかし、患者検体は貴重であるので、まずは患者骨髄から樹立された代表的な細胞株(U266)を用いて移植実験を開始した。細胞株を利用する利点は、繰り返し実験することが可能なことである。本年度は、昨年度中に作成されたヒト多発性骨髄腫モデルマウスを利用して、移植された骨髄腫細胞の生体内における骨髄腫治療薬に対する感受性を、NOGモデルとNOGJモデルで比較検討した。本年度の実験結果から、Jaggedを介したNotchシグナル伝達、および骨髄環境の変化が多発性骨髄腫の発症と進展に重要であることが明らかとなった。この結果を基に、患者検体を使用した移植実験を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、モデルマウスの作成に適した移植条件を確立したので、次年度以降は、患者検体を移植しモデルマウスを作成するとともに、骨髄腫細胞と骨髄微小環境の相互作用をさらに詳細に解析し、多発性骨髄腫の病態における骨髄微小環境の具体的な役割を明らかにする。また、骨髄腫細胞の増殖や薬剤感受性におけるNotchシグナルの役割をin vivo、in vitroの実験によって解析し、多発性骨髄腫の病態を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度である次年度は、交付額が今年度より少なくなるが、研究成果発表などの経費が必要となるので、今年度分から176630円を繰り越した。次年度研究費の具体的な内訳は、組織染色や細胞培養に用いる消耗品や実験動物購入費および飼育費(学内動物実験センターでの管理)などである。また、国内学会などで成果発表する際の旅費としての使用も計画している。
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