研究課題/領域番号 |
23500503
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
鈴木 進悟 東海大学, 医学部, 特定研究員 (30589776)
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研究分担者 |
椎名 隆 東海大学, 医学部, 准教授 (00317744)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | カニクイザル / 薬剤代謝遺伝子 / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
哺乳綱霊長目オナガザル科マカク属に属するカニクイザルやアカゲザルは形態(目、指紋、掌紋、内蔵、歯式等)、生理(内分泌及び代謝等)、知能ならびに疾患等においてヒトとの間に類似性または近似性が認められ、ヒトに最も近縁な実験動物の一種として、国内外を問わず種々の生物医学研究に頻繁に利用されている。ところが、その遺伝的背景はほとんど知られておらず、動物実験の際の使用個体数の削減や実験データの再現性の向上のためには、その遺伝背景を早急に明確にする必要がある。 本課題では、アメリカ食品医薬品局 (FDA) に認可され、創薬研究に興味深い257個の薬剤代謝遺伝子の全タンパク質翻訳エクソン(exome)における網羅的な多型情報を次世代シークエンシング技術を用いて収集し、その情報に基づいた個体選抜や前臨床試験に活用するシステムの構築を目指す。 薬物の吸収、輸送、代謝および排泄に関連する257個の薬剤代謝関連遺伝子を選択し、それら2,441個のエクソンに おけるDNA断片を回収するためのSequence Captureアレイを最近縁種であるアカゲザルのゲノム配列に基づいて設計した。そのアレイを用いて、ベトナム産とフィリピン産それぞれ10個体ずつのDNA断片を回収し、そのDNA断片の次世代シークエンシングにより、遺伝子多型情報を収集した。その結果、ベトナム産とフィリピン産に496個と373個の非同義置換をそれぞれ検出し、それらの内の79個は両者間に共通に検出された非同義置換であった。また、この過程でカニクイザルにおける薬物代謝関連遺伝子群の多型情報を高効率かつ短期間に収集する技術を開発したことから、特定の遺伝子群に焦点を絞った遺伝子多型解析は比較的安価かつ小規模な解析環境で遺伝子多型の収集に役立つと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の実施計画では、(1) ゲノムDNA サンプルの収集、(2) 薬剤代謝遺伝子における塩基配列情報の抽出、(3) シークエンスキャプチャアレイの開発とそれを用いたDNA断片の回収、(4) 次世代シークエンサーを用いた塩基配列の決定、(5) 多型データベースの開発による多型検出 までの5項目を計画しており、現在までに、ベトナム産とフィリピン産それぞれ10個体を用いて、設計したSequence Captureアレイによる次世代シークエンシングから、ベトナム産とフィリピン産に496個と373個の非同義置換をそれぞれ検出し、それらの内の79個は両者間に共通に検出された非同義置換であることを見出した。よって5項目の内容を満たしていることから「(2)のおおむね順調に進展している」を選ぶに相応すると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前度に得られた結果を基にして、さらに個体数を増した網羅的多型情報の収集、多型データベースの構築、多型検出チップの開発、その有効性の検証を通じ、非臨床試験の現場に多型情報ならびに多型情報付加個体を提供する体制を整備する。 具体的には、カニクイザル個体の薬剤代謝遺伝子多型に基づく個体選抜のためのジェノタイピングシステムの開発を計画する。タイピングシステムには安価で早くて高い成功率を特徴とするDigiTag2 法、ならびにタグ配列を組み込んだプライマーにより多型部位周辺のみを特異的にPCR増幅し、得られた増幅産物をGS Juniorで解読することを構想している。さらに、前年度で得られた非同義置換のデータを基に多様性解析を行い、アリルの頻度、アリル分布およびそれら多型に基づくハプロタイプの推定を集団ごとに実行、比較し、自然選択あるいは遺伝的浮動の影響を考察する。そして、酵素、輸送タンパク、受容体などにそれぞれ特化したタイピングシステムの構築を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、主にデータ解析およびジェノタイピングシステムの構築を計画しており、解析データを保存するための1TBのハードディスク、PCR 増幅に必要なポリメラーゼ、プライマー、サイズマーカー等の試薬消耗品および本研究報告のための論文投稿費に充当する。
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