研究概要 |
薬物の吸収、輸送、代謝および排泄に関連する257 個の薬剤代謝関連遺伝子、2,441 個のエクソンにおける DNA 断片の回収および次世代シークエンシング技術を用いて、ベトナム産とフィリピン産のカニクイザル、それぞれ 15 個体における遺伝子多型情報を収集した。その結果、ベトナム産とフィリピン産に 768 個(190 個の遺伝子)と556 個(173 個の遺伝子)の非同義置換がそれぞれ検出され、それらの内の 188 個(96 個の遺伝子)は両産地共通に検出された。さらに、dbSNP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)に登録されているヒトのSNP 情報を用いて、得られた非同義置換の進化学的保存性を精査した。その結果、ベトナム産に検出された26 個(25 個の遺伝子)ならびにフィリピン産に観察された 22 個(19 個の遺伝子)はヒトにも検出されている非同義置換であった。とりわけ、それらの内の6 個(6 個の遺伝子;CYP2C8, CYP2C18, CYP2A23, EPHX2, SULT1A2, TPMT)はヒトとカニクザルに保存されている共通なものであった。 一方、430 個の免疫関連遺伝子、3,883 個のエクソンを搭載したSequence Capture アレイを用いて、ある感染症に対して表現型の異なる2 群、計10 個体における多型解析を実施した結果、1 個の2群を分けることのできる非同義置換を検出した。したがって、アカゲザルのゲノム情報に基づいて、カニクイザルにおける薬物代謝関連遺伝子群ならびに応答関連遺伝子の多型情報を高効率かつ短期間に収集する技術を開発すると共に、多型情報解析パイプラインの確立に成功したことから、特定の遺伝子群に焦点を絞った遺伝子多型解析は比較的安価かつ小規模な解析環境で遺伝子多型の収集に役立つことが期待される。
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