研究課題/領域番号 |
23500507
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
越後貫 成美 独立行政法人理化学研究所, 遺伝工学基盤技術室, 専任技師 (40373287)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マウス / 一次精母細胞 / 顕微授精 / ライブセルイメージング / 発生工学 |
研究概要 |
マウスにおける顕微授精技術はほぼ完成した技術といえるが、一次精母細胞の顕微授精は産仔率が低く実用レベルに達していない。発生工学的興味、さらにはヒト不妊治療への将来的な利用観点からも一次精母細胞の低受精の解明および解決は非常に重要である。本研究は産仔効率がきわめて低率である一次精母細胞を用いた顕微授精の異常メカニズムを明らかにし、その効率を実用レベルまで引き上げることを目的としている。初年度である本年度は一次精母細胞注入直後からの卵子内での現象の把握と一部の異常点の改善を試みた。 一次精母細胞注入胚の低産仔率の原因の一つとして、第一減数分裂時の姉妹染色体の早期分離が示唆されている。ライブセルイメージング技術を用いて一次精母細胞顕微注入直後から卵子内の雌雄染色体の挙動について解析した結果、雌性染色体の分離が開始しているのに雄性染色体が凝集状態であるなど、雌雄両染色体の分裂スピードが一致していないことが明らかとなった。そこで両染色体分裂時期の同期化を図るため、チューブリンの重合促進剤であるタキソールを胚に作用させて雌性染色体の分離抑制を試みたが、効果は観察されなかった。また一次精母細胞顕微注入胚のヒストンアセチル化に関する免疫染色を行った結果、通常の受精では精子侵入後に卵子のヒストンアセチル化レベルは低下するところ、一次精母細胞顕微注入胚では高アセチルを維持している胚が多く観察された。ヒストンアセチル化酵素阻害剤を利用して一次精母細胞顕微注入胚のアセチル化を低下させたところ、産仔が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一次精母細胞注入胚のライブセルイメージング、免疫染色法による観察等により一次精母細胞注入胚の発生時に起こる異常現象の把握を行うことができた。本年度で得られた結果を元に次年度以降、メカニズムの解明および改善を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により一次精母細胞注入胚の注入直後からの卵子内での挙動とその化学修飾状態についての大まかな理解が進んだ。次年度はそれをベースにして特に雌雄両染色体の分離時期の同期化およびヒストン脱アセチル化の正常化を最大の目的としてライブセルイメージング技術、免疫染色法を利用してより詳細な解析を行う。この解析によって得られた情報により、卵子あるいは一次精母細胞に化学的修飾状態や顕微注入の時期を操作して改善条件を検索する。 また一次精母細胞顕微注入胚では姉妹染色分体の早期分離が多く観察されることから、一次精母細胞顕微注入胚での姉妹染色分体の結合をつかさどる分子(Rec8)の動態についての解析も行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額:12,242円 本研究では共焦点レーザー顕微鏡やマイクロマニピュレーター装着倒立顕微鏡、ライブセルイメージングシステムなどの実験器具はすでに申請者が所属する研究室が所有しているもの、もしくは導入予定のものを使用する。・マウス購入・維持費:卵子・精細胞採取用BDF1マウスおよび胚移植・里親用ICRマウス@1,000~1,500円x200~300匹+マウス用餌代。・顕微授精消耗品:プラスチック消耗品、試薬など。約2,000円/1回x70~90回。・ライブセルイメージング経費:mRNA調整試薬、抗体、PCR経費、画像データ保存用HD。・旅費:関連学会における成果発表と情報収集を兼ねる。・外国語論文の校閲および学会誌投稿料。
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