研究課題
マウスにおける顕微授精技術はほぼ完成した技術といえるが、一次精母細胞の顕微授精は産仔率が低く実用レベルに達していない。発生工学的興味、さらにはヒト不妊治療への将来的な利用観点からも一次精母細胞の低受精の解明および解決は非常に重要である。本研究は産仔効率がきわめて低率である一次精母細胞を用いた顕微授精の異常メカニズムを明らかにし、その効率を実用レベルまで引き上げることを目的としている。最終年度である本年度は、第一減数分裂時の姉妹染色体の早期分離の原因についての解析を試みた。去年度までにライブセルイメージング技術を用いて、一次精母細胞顕微注入直後から卵子内の雌雄染色体の挙動について解析したところ、雌雄両染色体の分裂スピードが一致していないことが明らかとなった。また、免疫染色法により、通常の受精卵では精子侵入後に卵子のヒストンアセチル化レベルが低下するところ、一次精母細胞顕微注入胚では高アセチルを維持している胚が多く観察され、ヒストンアセチル化の異常が卵子の発生を阻害している可能性が考えられた。その結果を踏まえて、今年度は第一減数分裂時の姉妹染色体早期分離が低受精率の一原因として考えられている老齢マウス卵子を用いて、卵子の染色体異常とヒストンアセチル化の関係について解析を行った。老齢マウス卵子(12-15ヶ月齢)では第二減数分裂中期において染色体の正常整列が見られないものが多く観察された。また免疫染色により、多くの卵子においてヒストンアセチル化が高い状態で維持されていることが明らかになった。つまり、一次精母細胞顕微注入胚は老齢マウスおける減数分裂パターンと非常に近い状態であることが明らかになった。
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