研究課題
本研究では小児慢性特定疾患であるシスチン蓄積症の新たなモデルラットを開発し、高速液体クロマトグラフィーを用いた、簡便で迅速な高感度診断法を開発することを目的とする。1. CTNS変異導入コンジェニックラットの作製 149個のマイクロサテライトマーカーを用いて、LEA/Senラットの第10染色体に存在するCTNS遺伝子変異をF344系統に導入したコンジェニックラットを作製する。平成23年度はN6世代のbest male(D/R比:0.7%)の作製が完了した。引き続き戻し交配を進め平成24年度にはコンジェニックが終了する予定である。2. HPLC分析によるシスチンの高感度分析およびラット組織におけるシスチン蓄積量の定量化 NBD-Fによって誘導体化したシスチンをODSカラムを用いて分析したところ、シスチンピークがテーリングし定量性を欠いた。そこで一体型多孔性シリカを基材としてヌクレオナヴィカラム(資生堂)と用いて分析したところ、テーリングも認められず高感度にシスチンが定量可能となった。最適な分離条件はアセトニトリル22.5%、0.05%トリフルオロ酢酸含有水溶液を移動相とし、カラム温度40度、流速100μl/minであった。検討したHPLC条件を基に52週齢のLEA/Senラットの各組織におけるシスチンを定量したところ、脾臓での蓄積が最も多くで次いで心臓、腎臓であった。経時的に採取できる血液や尿におけるシスチン蓄積量を測定したが、顕著な差は見られなかった。病理組織学的な解析の結果、腎尿細管上皮細胞が剥離脱落し、尿細管基底膜の肥厚が広範囲に観察された。
2: おおむね順調に進展している
CTNS変異導入コンジェニックラットの作製は、N5世代のbest maleの作出を計画したが、平成23年度にN6世代まで完了しており計画よりも一世代早い。HPLC分析についてはシスチン分析に最適な測定条件検討が終了し、その条件を基にLEA/Senラット組織におけるシスチン蓄積量を測定しており、ほぼ計画通りに進展している。
今年度に引き続きCTNS変異導入コンジェニックラットの作製を行い、新規シスチン蓄積症モデルラットを樹立する。樹立したモデルラットの各組織における病理学的変化を経時的に観察すると共に、今年度の結果を参考に各組織におけるシスチン蓄積量を定量化し、シスチン蓄積症モデルとしての評価を行う。
昨年度からの繰り越しは約20万円である。これはコンジェニックラット作製において、予定より早くbest maleが作出できたことによりラットの飼育数が少なくなり、飼育経費が軽減したことが理由である。動物の飼育数は目的遺伝子近辺の組み替え率に依存する為、繰越金はそのまま実験動物飼育経費に使用する。本年度は、学会参加および研究打ち合わせのための、国内旅費を15万円計上し、その他は実験動物およびHPLCを稼動させるための消耗品を購入するための、物品費として使用する。
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J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.
巻: 879 ページ: 3184-3189
10.1016/j.jchromb.2010.08.024