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2011 年度 実施状況報告書

細胞内酸素濃度イメージングのための蛍光・りん光同時発光型分子酸素計の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23500511
研究機関群馬大学

研究代表者

吉原 利忠  群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10375561)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード蛍光 / りん光 / 酸素 / イリジウム錯体 / 細胞 / レシオ
研究概要

本研究は,細胞内の酸素濃度および濃度分布を高感度,非侵襲的にリアルタイムイメージング,計測するための蛍光・りん光同時発光型分子酸素計を開発することである。本年度は,青色蛍光を示すクマリン系蛍光色素であるC343と,赤色りん光を示すイリジウム錯体であるBTPをプロリン残基数4のオリゴプロリンリンカーで結合させたC343-Pro4-BTPの合成を行った。開発したC343-Pro4-BTPは,アセトニトリル中においてC343由来の蛍光とBTP由来のりん光が同時に観測された。また,溶液中の酸素分圧をマスフローメーターで0-160mmHgの範囲で変化させたところ,C343の蛍光強度は一定の値を示したのに対して,BTPのりん光強度は,酸素分圧の増加ともに減少を示した。さらに,酸素分圧に対して(蛍光強度)/(りん光強度)をプロットすると直線関係が得られ,傾きからStern-Volmer定数(K)を決定した。同様な実験をリン脂質膜存在下においても行ったところ,レシオ測定が可能であることが明らかとなった。ここで,アセトニトリル中とリン脂質膜中でのK値は異なっていた。これは,溶液中と膜中で酸素濃度と酸素拡散定数が異なることを意味しており,今後さらに研究を実施することが必要である。 20%および2.5%酸素条件下で培養したHeLa細胞にC343-Pro4-BTP溶液を添加し,2時間培養後,蛍光顕微鏡で観察をおこなったところ,C343に由来する蛍光は,培養酸素濃度に依存しないのに対して,BTPに由来するりん光は,2.5%酸素条件下において,20%酸素条件下よりも増加した。以上のことより,開発したC343-Pro4-BTPは,生細胞内においてもレシオプローブとして機能することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は,細胞内の酸素濃度および濃度分布を高感度,非侵襲的にリアルタイムイメージング,計測するための蛍光・りん光同時発光型分子酸素計を開発することである。本年度は,蛍光団として青色蛍光を示すクマリン色素(C343)とりん光団として赤色りん光を示すイリジウム錯体(BTP)をプロリンリンカーで結合させたC343-Pro4-BTPの合成を行なった。C343-Pro4-BTPは405nm光励起によって,アセトニトリル中およびリン脂質膜中において蛍光とりん光が同時に観測された。また,系中の酸素分圧を変化させて発光スペクトル測定を行ったところ,C343由来の蛍光は酸素分圧に対して一定強度を示したのに対して,BTP由来のりん光は,酸素分圧の増加に伴い減少した。C343-Pro4-BTP溶液をHeLa細胞の培地に添加し,蛍光顕微鏡で観測した結果,細胞内から蛍光とりん光が観測され,さらに,りん光強度は低酸素培養条件で増加した。 以上の結果より,C343-Pro4-BTPは,蛍光とりん光のレシオ比を利用することにより,溶液,脂質膜,細胞中の酸素濃度を定量的に解析できるプローブ分子であることがわかり,本年度の目標に到達している。

今後の研究の推進方策

本年度開発したC343-Pro4-BTPは,生細胞内において酸素濃度に依存して,蛍光に対するりん光強度比が変化することは確認できたが,細胞親和性が低いことが課題としてあるため,この点を改良するための研究を進める。また,C343は青色蛍光を示す蛍光色素であるが,今後は緑色蛍光を示す蛍光色素でもレシオ型酸素プローブとして機能するかの検討を行う。

次年度の研究費の使用計画

平成23年度は,目的化合物の合成が予想以上に進展したため,試薬,消耗品費の使用が予定よりも少なくなり,その差額を平成24年度の試薬,消耗品費に充てる。平成24年度は,細胞親和性の高いレシオ型酸素プローブ分子の開発のための試薬,溶媒,およびプローブ分子の溶液,脂質,細胞内評価について,差額分を含めて消耗品費として研究費を使用する。また,研究成果発表のための旅費として研究費を使用する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Ratiometric Molecular Sensor for Monitoring Oxygen Levels in Living Cells2012

    • 著者名/発表者名
      Toshitada Yoshihara, Yuji Yamaguchi, Masahiro Hosaka, Toshiyuki Takeuchi, and Seiji Tobita
    • 雑誌名

      Angew. Chem. Int. Ed.

      巻: 51 ページ: 4148-4151

    • DOI

      10.1002/anie.201107557

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mitochondria-Specific Oxygen Probe Based on Iridium Complexes Bearing Triphenylphosphonium Cation2012

    • 著者名/発表者名
      Tokiko Murase, Toshitada Yoshihara, and Seiji Tobita
    • 雑誌名

      Chem. Lett.

      巻: 41 ページ: 262-263

    • DOI

      10.1246/cl.2012.262

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Iridium Complex Probes for Monitoring of Cellular Oxygen Levels and Imaging of Hypoxic Tissues2012

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshihara, A. Kobayashi, S. Oda, M. Hosaka, T. Takeuchi, and S. Tobita
    • 雑誌名

      Proc. SPIE

      巻: - ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of Iridium(III) Complexes with High Cellular Uptake Efficiency2011

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshihara, K. Ichikawa, M. Hosaka, T. Takeuchi, and S. Tobita
    • 雑誌名

      Photomedicine and Photobiology

      巻: 33 ページ: 15-16

  • [学会発表] ミトコンドリア局在性を示すイリジウム錯体を用いた分子酸素センサーの開発2012

    • 著者名/発表者名
      吉原利忠,村瀬秋子,飛田成史
    • 学会等名
      日本化学会第92春季年会(2012)
    • 発表場所
      慶應義塾大学 日吉キャンパス(神奈川県)
    • 年月日
      2012年3月26日
  • [学会発表] Developments of Hypoxia-Sensing Probes with High Cellular Uptake Efficiency2011

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshihara, K. Ichikawa, M. Hosaka, T. Takeuchi, and S. Tobita
    • 学会等名
      The First International Symposium on Element Innovation
    • 発表場所
      Kiryu, Gunma, Japan
    • 年月日
      9 December 2011
  • [学会発表] 生体内低酸素領域を識別するためのイリジウム錯体の開発および生体内発光特性2011

    • 著者名/発表者名
      吉原利忠,市川和貴,大堀優佳,小林敦,穂坂正博,竹内利行,飛田成史
    • 学会等名
      第5回分子科学討論会2011
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道)
    • 年月日
      2011年9月21日
  • [学会発表] 高い細胞膜透過性を示すイリジウム錯体の開発およびin vivo光イメージング2011

    • 著者名/発表者名
      吉原利忠,市川和貴,穂坂正博,竹内利行,飛田成史
    • 学会等名
      第33回日本光医学・光生物学会
    • 発表場所
      大阪大学銀杏会館(大阪府)
    • 年月日
      2011年7月22日
  • [学会発表] がんの光イメージングのためのりん光プローブ分子の開発2011

    • 著者名/発表者名
      吉原利忠,市川和貴,八木橋美樹,穂坂正博,竹内利行,飛田成史
    • 学会等名
      第6回日本分子イメージング学会学術大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県)
    • 年月日
      2011年5月26日
  • [備考]

    • URL

      http://www.chem-bio.gunma-u.ac.jp/~tobita-lab/index.html

  • [産業財産権] レシオ法に基づいた酸素センサー2011

    • 発明者名
      吉原利忠,間島健太,飛田成史
    • 権利者名
      国立大学法人群馬大学
    • 産業財産権番号
      特許: 特願2011-191551
    • 出願年月日
      2011年09月02日

URL: 

公開日: 2013-07-10   更新日: 2013-08-28  

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