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2012 年度 実施状況報告書

細胞内酸素濃度イメージングのための蛍光・りん光同時発光型分子酸素計の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23500511
研究機関群馬大学

研究代表者

吉原 利忠  群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10375561)

キーワード蛍光 / りん光 / 酸素 / イリジウム錯体 / 細胞 / レシオ
研究概要

本研究は,細胞内の酸素濃度および濃度分布を高感度,非侵襲的にリアルタイムイメージング,計測するための蛍光・りん光同時発光型分子酸素計を開発することである。本年度は,青色蛍光を示すクマリン系蛍光色素であるC343と,赤色りん光を示すカチオン性イリジウム錯体である(btp)2Ir(phen)をプロリン残基数4のオリゴプロリンリンカーで結合させたC343-Pro4-BTP+の合成を行った。開発したC343-Pro4-BTP+は,アセトニトリル中においてC343由来の蛍光と(btp)2Ir(phen)由来のりん光が同時に観測された。また,溶液中の酸素分圧をマスフローメーターで0-160mmHgの範囲で変化させたところ,C343の蛍光強度は一定の値を示したのに対して,(btp)2Ir(phen)のりん光強度は,酸素分圧の増加ともに減少を示した。
20%酸素条件下で培養したHeLa細胞にC343-Pro4-BTP(平成23年度開発化合物)およびC343-Pro4-BTP+溶液を最終濃度10μMで添加し,12時間培養後,蛍光顕微鏡で観察をおこなったところ,C343-Pro4-BTP は培養液中で凝集体を形成するため顕微画像の取得が困難であるのに対して,C343-Pro4-BTP+は細胞内から明瞭な発光が観測された。また,C343に由来する蛍光は,培養酸素濃度に依存しないのに対して,(btp)2Ir(phen)に由来するりん光は,2.5%酸素条件下において,20%酸素条件下よりも増加した。以上のことより,開発したC343-Pro4-BTP+は,生細胞内においてもレシオプローブとして機能することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は,細胞内の酸素濃度および濃度分布を高感度,非侵襲的にリアルタイムイメージング,計測するための蛍光・りん光同時発光型分子酸素計を開発することである。本年度は,蛍光団として青色蛍光を示すクマリン色素(C343)とりん光団として赤色りん光を示すイリジウム錯体((btp)2Ir(phen))をプロリンリンカーで結合させたC343-Pro4-BTP+の合成を行なった。C343-Pro4-BTP+は405nm光励起によって,アセトニトリル中において蛍光とりん光が同時に観測された。また,系中の酸素分圧を変化させて発光スペクトル測定を行ったところ,C343由来の蛍光は酸素分圧に対して一定強度を示したのに対して,BTP由来のりん光は,酸素分圧の増加に伴い減少した。C343-Pro4-BTP+溶液をHeLa細胞の培地に添加し,蛍光顕微鏡で観測した結果,細胞内から蛍光とりん光が観測され,さらに,りん光強度は低酸素培養条件で増加した。
以上の結果より,C343-Pro4-BTP+は,蛍光とりん光のレシオ比を利用することにより,溶液,脂質膜,細胞中の酸素濃度を定量的に解析できるプローブ分子であることがわかり,本年度の目標に到達している。

今後の研究の推進方策

本年度開発したC343-Pro4-BTP+は,生細胞内において酸素濃度に依存して,蛍光に対するりん光強度比が変化することは確認でき,また,C343-Pro4-BTP(平成23年度開発化合物)と比較して細胞親和性が大幅に向上した。今後は,HeLa細胞だけでなく,他の細胞を用いて同様な実験を行い,C343-Pro4-BTP+がレシオ型酸素プローブ分子として汎用的に使用可能か検討する。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は,C343-Pro4-BTP+のレシオイメージングを,さまざな細胞で評価するための試薬,溶媒,細胞培養のためのプラスチック類を消耗品費として研究費を使用する。また,研究成果発表のための旅費として研究費を使用する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Environment-Sensitive Fluorophores with BenzoThiadiazole and Benzoselenadiazole Structures as Candidate Compounds of a Fluorescent Polymetric Thermometer2012

    • 著者名/発表者名
      S. Uchiyama, K. Kimura, C. Gota, K. Okabe, K. Kawamoto, N. Inada, T. Yoshihara, S. Tobita
    • 雑誌名

      Chem. Eur. J

      巻: 18 ページ: 9552-9563

    • DOI

      10.1002/chem.201200597

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Remarkable Fluorescence Enhancement of Benzo[g]chromon-2-ones Induced by Hydrogen-bonding Interaction with Protic Solvents2012

    • 著者名/発表者名
      A. Kobayashi, K. Takehira, T. Yoshihara, S. Uchiyama, and S. Tobita
    • 雑誌名

      Photochem. Photobiol. Sci.

      巻: 11 ページ: 1368-1376

    • DOI

      10.1039/c2pp25055a

    • 査読あり
  • [学会発表] Fluorescent Properties of Cholesterol Analogs with Dansyl Group in Model Membranes and Living Cells2012

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshihara, K. Arai, and S. Tobita
    • 学会等名
      XXIV IUPAC Symposium on Photochemistry
    • 発表場所
      Coimbra, Portugal
    • 年月日
      2012-07-16
  • [学会発表] Phosphorescence Imaging of Tumors Using Iridium Complexes

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshihara, M. Hosaka, T. Takeuchi, and S. Tobita
    • 学会等名
      14th International Congress of Histochemistry and Cytochemistry
    • 発表場所
      Kyoto, Japan
    • 招待講演
  • [学会発表] Photophysical Properties of Iridium Complexes Bearing Trimethylsilyl-substituted Benzothienylpyridinato Ligands

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshihara, A. Tanaka, S. Murayama, S. Kato, Y. Nakamura, and S. Tobita
    • 学会等名
      The Second International Symposium on Element Innovation
    • 発表場所
      Kiryu, Japan
  • [学会発表] カチオン性イリジウム錯体を用いた腫瘍のin vivo光イメージング

    • 著者名/発表者名
      吉原利忠,田中亜沙美,穂坂正博,寺田幹,竹内利行,飛田成史
    • 学会等名
      第34回日本光医学・光生物学会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県)
  • [学会発表] 低酸素環境イメージングを指向した近赤外光領域にりん光を示すイリジウム錯体の開発

    • 著者名/発表者名
      吉原利忠,八木橋美樹,穂坂正博,竹内利行,飛田成史
    • 学会等名
      2012年光化学討論会
    • 発表場所
      東京工業大学 大岡山キャンパス(神奈川県)
  • [学会発表] 細胞内酸素濃度計測を目指したレシオ型酸素プローブの開発

    • 著者名/発表者名
      吉原利忠,山口祐司,穂坂正博,竹内利行,飛田成史
    • 学会等名
      第6回分子科学討論会2012東京
    • 発表場所
      東京大学 本郷キャンパス(東京都)
  • [学会発表] ジピリナート配位子を有するイリジウム錯体を用いた低酸素環境イメージング

    • 著者名/発表者名
      吉原利忠,八木橋美樹,穂坂正博,竹内利行,飛田成史
    • 学会等名
      日本化学会第93回春季年会(2013)
    • 発表場所
      立命館大学 草津キャンパス(滋賀県)
  • [備考] http://tobita-lab.chem-bio.st.gunma-u.ac.jp/

  • [産業財産権] 特許2012

    • 発明者名
      吉原利忠,木村知代,金子亜紀,飛田成史
    • 権利者名
      国立大学法人群馬大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2012-102736
    • 出願年月日
      2012-04-27

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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