現在市販されている人工血管素材を用いた小口径人工血管は、血栓が生じやすく、使用方法が限定されているため、小口径人工血管の開発は急務かつ、重要な課題となっている。また、医療材料として期待されている絹フィブロインは高い強度を有するが、人工血管として用いるには、伸縮性や弾性などを補強しなければ使用することは困難である。そこで本研究では、ポリウレタンを絹フィブロインと複合化させた新規素材の開発を目的とした。今年度は、基礎的知見を更に深めると共に、人工血管のみならず、大血管修復用シートも視野にいれた応用研究を行った。 前年度までは、絹フィブロインとポリウレタンの混合状態の相溶性とダイナミクスについて、固体NMR法を用いた詳細な解析を行い、ポリウレタンと絹フィブロインが部分的な相溶状態にあること、また、機能性ペプチドの絹フィブロインへの固定化を確立した。当該年度は、ポリウレタンの種類について精査するとともに、材料の最適化として、絹フィブロイン分子に抗血栓性、細胞接着性が期待される、「ヘパリン」を固定化する条件の最適化を行ない、ヘパリンを適切な比率で絹フィブロイン架橋できることに成功した。 さらに本研究で得られた材料は、小口径人工血管のみならず、比較的大口径な血管を修復するシートについても応用が可能であるため、応用の幅を広げることが期待される。
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