研究概要 |
がん死因第1位の肺がんの死亡率低下に肺がんCT検診が有効であることが示されている.この検診は指摘される肺がん候補数(径3 cm以下)が多く,非がんの頻度が高いことが示されている.このため高精度な肺がんの画像診断法の開発が求められている.肺がん候補のCT画像診断の主な基準として目視評価による肺がん候補の大きさ,濃度情報が用いられている.指摘される肺がん候補は多様な病態をもち,CT画像上の肉眼的診断では限界がある.我々は経時拡大CT画像データベースを用いて肺がんの病態を時空間で解析する肺がんの定量解析法を研究開発した.小型非小細胞肺がん(径3cm以下)の濃度情報に焦点を当てCT値ヒストグラムを用いて肺がんを5つのタイプ(α, β, γ, δ, ε)に分類する手法を提案した.図1に5タイプ分類の典型的な例を示す.臨床病期IAの非小細胞肺がん450症例を用いて提案の分類法の有効性を次の観点から検証した. ・ 拡大CT画像からの肺がん抽出精度の影響:2名の異なるオブザーバーが独立に抽出した2種類の肺がん画像群からタイプ分類を行い,各群の分類結果の一致度を統計的に評価した.5タイプ分類の結果は有意に一致し,再現性の高い分類法であることが示された. ・ 肺がん予後との関連:予後との関連を臨床情報(年齢,性別,喫煙歴),画像情報(肺がんの体積, 5タイプ分類,スピキュラ,胸膜接触,血管・気管支関与の有無),病理情報(病理病期分類,リンパ管侵襲や血管浸潤の有無,組織型)を共変量とした多変量Cox比例ハザードモデルを用いて分析した.5タイプ分類,病期分類,リンパ管侵襲が有意でかつ独立した予後因子として認められた.
|