研究課題/領域番号 |
23500520
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
高橋 英嗣 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30206792)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 量子ドット / 酸素 / 培養細胞 / イメージング |
研究概要 |
連携研究者の協力の下、酸素応答性を有すると予想されるL-cysteine capped CdTe量子ドット(以下、量子ドットと呼ぶ)の合成を行った。さらに量子ドットの粒子径を制御することで、蛍光波長の制御が可能な事をバッファ溶液中で示した。この時、バッファ溶液中で量子ドットの安定性に限度があることが新たに判明した。つぎに、合成した量子ドットを培養細胞(COS-7およびHep3B)に導入する際の条件を検索した結果、培養液中で、濃度10 nMの量子ドットを30分間インキュベートするのが最適と判明した。また、 細胞内に導入した量子ドットの画像解析から、量子ドットは細胞内小器官に速やかに蓄積することが判明した。細胞外酸素濃度を低下させると量子ドットの蛍光が相対的に増加し、逆に、細胞外酸素濃度の増加に伴い蛍光の低下が見られた。以上より量子ドットは細胞内において酸素濃度の光学プローブとなり得ることが判明した。一方、培養細胞を対象としたin vivo酸素プローブとして量子ドットを実用化する際の問題点が判明した。すなわち、今回用いた量子ドットは、蛍光強度が比較的弱く、励起光による蛍光の減衰が大きく、酸素濃度変化に伴う蛍光の変化幅が小さい等々である。 以上より、細胞内に導入した量子ドットの蛍光が、細胞外酸素濃度変化に応答することが判明し、当初の予想が証明されたものの、今回の量子ドットをそのままでin vivo酸素プローブとして用いるには解決すべき問題点が多い事が判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上の"研究実績の概要"に説明した通り、当初の計画である、量子ドットの合成、細胞内導入、細胞内での酸素応答性に関する実験を順調に終了できた。今回の量子ドットの細胞内酸素応答性については、予想通りの結果が得られたものの、実用化に向けて、様々な問題点を発掘する事ができた。以上より、全体として、研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度の研究で、今回の量子ドットを細胞内酸素プローブとして実験室レベルで実用化する際の問題点が明らかとなった。H24年度はこれらの問題点を解決するために、連携研究者と密接に連絡を取りつつ、量子ドットの改良を行う。具体的には、量子ドットの材質、構造(コアーシェルタイプ)、および表面修飾分子の最適化等々である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度は先の震災に伴う減額等に備えるため、他の予算から研究費を充当したため、当初計画より支出が少なくなった。H24年度は、H23年度に準じた支出(おもに消耗品)を予定しているが、それに加えて国際学会(ISOTT2012、ベルギー、8月19日~23日)を含む、各種学研究会での発表を予定しているため、旅費の支出が増加する予定である。
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