研究課題/領域番号 |
23500520
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
高橋 英嗣 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30206792)
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キーワード | 量子ドット / 培養細胞 / 酸素 |
研究概要 |
H23年度明らかになったいくつかの問題、すなわち、今回新規合成したL-cysteine capped CdTe量子ドットの1.蛍光強度が比較的小さい事、2.励起光による退色が無視できない事、3.酸素濃度依存性蛍光強度変化量が比較的小さい事、について定量的に解析した。1については市販の量子ドット(Qtracker525、Invitrogen社)がバッファ中でも細胞中でも蛍光強度に変化がなかったのに対し、本研究で新規合成したQD580は細胞内でその蛍光強度がバッファ中の1/35程度に減少した。Qtracker525が細胞質に一様に分布していたのに比較し、QD580は細胞内小器官に取り込まれ、局所的集団として存在していた。2については、QD580は5回の繰り返し励起に対し蛍光強度が40%程度低下した。また、蛍光強度の低下は雰囲気の酸素濃度に依存した。しかしながら励起間隔を10分とした所、蛍光強度の回復が観察され、蛍光強度の減少は10%程度に抑えられる事がわかった。一方、Qtracker525では、繰り返し励起に伴う蛍光強度低下は見られなかった。3については、酸素濃度の最大変化に対して、蛍光強度変化は20%程度に留まった。今回の実験では蛍光強度の絶対値測定が不可能だったため、酸素濃度変化に伴うQD580蛍光強度変化は、ある酸素濃度における蛍光強度を基準として、それからの変化分をもって評価せざるを得なかった、これを改善するために、酸素濃度非依存性量子ドットであるCdTe/ZnS量子ドット(蛍光波長は420 nm)をQD580と同時に細胞内に導入し、両者の蛍光比をとることでQD580蛍光の変化を定量しようと試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回合成した量子ドットQD580の蛍光強度は確かに酸素濃度依存性を示したが、計画申請当初予測されたように、in vivoプローブとして用いるにはさらなる最適化が必要な事が改めて判明した。従って、現在まで、当初予定の平成24年度前半部分をほぼ達成したといえる。しかしながら、当初予定平成24年度後半の動物個体を用いた測定に移行するには、解決すべき問題が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
量子ドットのさらなる最適化を目指す。具体的には、安定性および蛍光強度増強を目指しコアーシェルタイプの量子ドットを用いる事、また、蛍光波長と酸素依存性に大きく影響すると考えられる量子ドットの粒子径の最適化が当面の目標である。また、それぞれ蛍光波長の異なる酸素依存性量子ドットと酸素非依存性量子ドットを同時に細胞内へ導入することで、測定のネックであった定量性の確保に目処をつける。以上を達成するためには、これまでの量子ドットに加え、さらに新たな量子ドットの合成とその機能スクリーニングを迅速に進める必要がある。そのために、量子ドット合成を担当する連携研究者(神 隆 博士、理研)との間でさらに綿密な研究打合せを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまで通り、培養細胞の維持、量子ドット合成に必要な試薬等の消耗品が大きな部分を占めるが、次年度は連携研究者とのさらに密接な打合せが必要となるため打合せ旅費をこれまで以上に計上する。また、成果発表旅費(国際学会)も計上する。
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