研究課題/領域番号 |
23500522
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
勝田 新一郎 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (80285022)
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研究分担者 |
宮下 洋 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90301449)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 中心動脈圧推定 / 末梢動脈圧脈波 / augmentation index / 動脈硬化 |
研究概要 |
本研究の目的は、一般化伝達関数(GTF)を用いずに末梢動脈圧脈波から中心動脈収縮期血圧を簡便に推測できる方法を開発することである。平成23年度は動物実験を行い、その基礎データの取得に努めた。 実験には10-12か月齢の正常および遺伝性高コレステロール血症(KHC)ウサギならびに22-24か月齢のKHCウサギを用いた。ペントバルビタール麻酔下(30mg/kg、i.v.)にて仰臥位固定し、右総頸動脈より2本のミラー社製カテーテル圧トランスデユーサー(2Fr)を先端がそれぞれ上行大動脈および右鎖骨下動脈分岐部付近に位置するように挿入・固定した。右橈骨動脈よりもう一本のカテーテル圧トランスデューサー(2Fr)を肘関節部の上腕動脈遠位端にまで挿入した。超音波血流計プローブは、右鎖骨下動脈起始部、右上腕動脈遠位部および上行大動脈に装着した。右心房に刺激用電極を装着し、レギュラーペーシングに続いてランダムペーシングを行った際に上記部位における圧脈波と血流波を同時記録した。つぎに、昇圧剤であるアンジオテンシンII(30-40 ng/kg/min)および降圧剤である塩酸ニトロプルシッド(20-30 μg/kg/min)をそれぞれ輸液ポンプを用いて静脈内に投与し、血圧レベルがほぼ一定になったところで(昇圧:135~145mmHg、降圧:75~85mmHg)レギュラーペーシングに続いてランダムペーシングを行い、上記部位における圧脈波と血流を同時記録した。実験終了後、KHCウサギの大動脈を起始部から総腸骨動脈分岐部まで摘出して長軸方向に切開し、内膜面の画像をスキャナーを用いてコンピューターに入力した。 実験が終了した個体から、中心動脈および末梢動脈における圧脈波について、末梢動脈部位からの反射波成分の割合を表す指標であるaugmentation index (AI)の算出を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の本研究の主な計画は、10-12および22-24か月齢の正常およびKHCウサギを用い、中心動脈(上行大動脈)、右鎖骨下動脈分岐部、末梢動脈(右上腕動脈)において、アンジオテンシンおよび塩酸ニトロプルシッドの投与による昇圧時および降圧時における圧脈波と血流波をレギュラーペーシング下に続いてランダムペーシング下で記録することである。現在のところ、10-12か月齢の正常およびKHCウサギについての実験は終了し、AIのデータ解析を行っている。24か月齢のKHCウサギについては、現在のところ90%程度実験が進行している。22-24か月齢の正常ウサギについては、予算執行が可能になった昨年夏の段階では、東日本大震災の影響もあり、実験動物の取り扱い業者にはその月齢のウサギの在庫はなく、最も月齢の高いウサギの在庫でも4~5か月齢であった。そのために、それを用いた実験に着手するに至らなかった。 22-24か月齢の正常ウサギの実験には着手できなかった代わりに、取得したデータについての解析を前倒しして開始しているので、研究自体はおおむね順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、コンピューターに保存してある大動脈内膜面の画像について、硬化病変面積率を画像解析ソフトを用いて計測する。つぎに、上行大動脈(中心動脈)および右上腕動脈(末梢動脈)における圧脈波のaugmentation index (AI)の算出を引き続き実施する。さらに、末梢動脈で記録した圧脈波から収縮期第2血圧(第2ピーク)を求め、これと末梢動脈収縮期血圧(第1ピーク)から中心動脈収縮期血圧を推定する方法を確立させる。 今年度から来年度にかけては、右鎖骨下動脈起始部と右上腕動脈遠位部における入力インピーダンスの算出、右鎖骨下動脈起始部と上腕動脈遠位部における反射係数の算出ならびに右鎖骨下動脈起始部および右上腕動脈遠位部における圧脈波および血流波の前進波と反射波の分離を試みる(主に分担研究者が担当)。 動物実験については、現在、在庫のある若齢の正常ウサギを22-24か月齢に達するまで延長飼育すると、1年間の延長飼育のみで1匹あたり5万円、1年6か月になると約7万5千円がウサギの値段に上乗せされることになり、1匹当たりの購入金額は10万円近くになる。そうすると、今年度の予算のすべてをウサギの購入費に当てる必要があり、試薬や出張旅費等の他の支出が困難となる。その場合はやむを得ず研究計画を変更(22-24か月齢の正常ウサギを用いた実験のみ割愛)しなければならない状況である。なお、正常ウサギでは12か月齢と24か月齢では、循環機能における加齢変化はほとんどみられないことを以前に報告しているため、計画を変更しても研究の本質自体には大きな影響はないと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
22-24か月齢のKHCウサギを用いた実験を追加するため、ウサギの購入費や飼育経費に充当する。実験に必要な麻酔薬、試薬、データ保存用のフラッシュメモリーなども購入する。また、学会、研究会などでの発表のための出張旅費や参加費にも使用する。もし、予算に余裕があれば、実験によりセンサー部の感度が劣化したカテーテル圧トランスデューサーの購入にも充当する予定である。
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