研究課題/領域番号 |
23500522
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
勝田 新一郎 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (80285022)
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研究分担者 |
宮下 洋 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90301449)
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キーワード | 圧脈波解析 |
研究概要 |
本研究は、末梢動脈圧脈波から一般化伝達関数(generalized transfer function; GTF)を用いずに中心動脈収縮期血圧を簡便かつ正確に推測できる方法を開発することを目的とする。平成24年度は、動物実験を一部追加するとともに、データ解析を実施し、さらに論文作成を行った。 まず、実験についてである。昨年の計画では、22-24か月齢のKHCウサギ1~2匹を追加実験に用いる予定であったが、東日本大震災と度重なる余震により実験動物業者で飼育されているKHCウサギにPTSDが現れ、大部分のウサギが実験に供する状態ではなかった。その後、母ウサギの育児拒否により系統維持が困難な状況に陥り、この実験は断念せざるを得なかった。実際に追加実験としては、10-12か月齢の正常ウサギを用いて行った。実験方法は昨年度と同様である。 つぎに、昨年記録した圧脈波を用いて末梢動脈部位からの反射波成分の割合を表す指標であるaugmentation index (AI)を求めた。その結果、動脈硬化の有無や血圧レベルに関係なく末梢動脈AIの変化は中心動脈AIの変化に追従することが明らかになった。摘出した大動脈内膜面の硬化病変面積率は画像解析ソフトを用いて解析し、加齢により硬化病変は進行することが定量的に示された。それから、末梢動脈圧脈波の最初のピークの圧(pSBP)と二番目のピークの圧(pSBP2)との平均値(pSBPm)を算出し、pSBPmの値は動脈硬化の有無や進展の程度、血圧レベルに関係なく中心動脈収縮期血圧(cSBP)の正確かつ簡便な推定値になりうることが明らかになった。 上記結果は現在、共同研究者を含めて3編の論文にまとめているところであり、1編は高血圧関係の国際専門雑誌に投稿した。1編は35th Annual International IEEE EMBSにacceptされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に計画した10-12および22-24か月齢のKHCウサギならびに10-12か月齢の正常ウサギにおける実験に関しては終了し、上行大動脈および上腕動脈における圧脈波と血流波のデータを取得した。 中心動脈と末梢動脈の圧脈波についてはAIの算出がすべて終わり、動脈硬化の有無や血圧レベルに関係なく末梢動脈AIの変化は中心動脈AIの変化に追従することを明らかにした。大動脈の硬化病変面積率に関しては画像解析ソフトを用いて計算が終了し、加齢に伴って硬化病変が有意に進展することが定量的に示された。末梢動脈圧脈波から中心血圧の簡便な推定法については、末梢動脈圧脈波の最初のピークの圧(pSBP)と二番目のピークの圧(pSBP2)との平均値(pSBPm)の値が動脈硬化の有無や進展の程度、血圧レベルに関係なく中心動脈収縮期血圧(cSBP)の正確かつ簡便な推定値になりうることが明らかになった。 これらの成果は3編の論文としてまとめ、共同研究者である宮下氏が投稿した論文は4月に35th Annual International IEEE EMBSにacceptされた。残りの論文のうち1編は高血圧の国際専門雑誌であるHypertension Researchに投稿し、reviewerからのコメントに従ってreviseを行っているところである。もう一編は現在、作成を開始するところである。また、本研究テーマと関連して、中心動脈AIは加齢による動脈硬化の進行に伴ってほとんど変化しないことを示した論文が本年3月にAmerican Journal of Hypertensionに掲載された。この論文には、本研究を発表する際の参考となる内容が含まれている。 上記理由より、研究はおおむね順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究課題の最終年度に当たるため、取得したデータから動脈インピーダンスと反射係数の算出、前進波と反射波との分離などを行う(主に分担研究者が担当)。つぎに、現在revise中の論文がacceptされるように務め、末梢圧脈波から中心血圧の新たな推定法に関する論文を書き上げ、高血圧の国際専門雑誌に投稿することである。 実験については、昨年、22-24か月齢の正常ウサギを用いた実験が可能かどうか、動物生産業者の在庫状況と飼育経費などの予算と合わせて検討したところ、昨年5月の段階では難しいと予測された。しかしながら、昨年6月下旬に12か月齢に近い月齢の正常ウサギを首尾よく購入することができたので、飼育経費は予定より少ない額で納まることになった。ウサギは現在飼育中で、7月頃に実験に供する22-24か月齢に達するので、計画を変更することなく7~8月に実験を行うことが可能である。実験の方法は昨年度と同様である。
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次年度の研究費の使用計画 |
22-24か月齢の正常ウサギにおける実験が本年7~8月に可能になったので、それに必要な消耗品の購入や飼育経費に充当する。なお、ウサギの購入に関しては昨年度の経費でまかなうことができた。今年度は学会発表や論文発表を精力的に行う予定で、まずは、7月に国際学会(International IEEE EMBS 2013、大阪で開催)で研究成果を発表するので、旅費および参加費に充当する。それから、論文投稿の際の英文校正の費用や掲載の際の別刷り代にも使用する予定である。備品などの購入の予定はない。
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