本研究の目的は、末梢動脈圧脈波から中心動脈収縮期血圧を一般化伝達関数(GTF)を用いず、簡便かつ正確に推測する方法を開発することである。 最終年度(平成25年度)は、未実施であった24か月齢の正常ウサギにおける上行大動脈および上腕動脈における圧脈波と血流波の記録を行った。圧脈波に占める末梢からの反射波成分の指標であるaugmentation index (AI)は、12および24か月齢の遺伝性高コレステロール血症(KHC)ウサギや12か月齢の正常ウサギと同様に、末梢動脈AIの変化は中心動脈AIの変化に追従することが明らかになった。また、末梢動脈圧脈波の最初のピーク圧(pSBP)と2番目のピーク圧(pSBP2)との平均値(pSBPm)は、12および24か月齢のKHCウサギおよび12か月齢の正常ウサギで得られた結果と同様に、中心動脈収縮期血圧(cSBP)に近似することが示された。したがって、pSBPmは、粥状硬化病変の有無や病変の進行度および血圧レベルにかかわらずcSBPの正確かつ簡便な推定値になりうることが明らかになった。 末梢動脈における中心動脈圧のamplification (末梢動脈圧の中心動脈圧に対する%)であるrAI(%)とpSBP-cSBPとの関係は、rAI(%)とpSBP2-cSBPとの関係と鏡像的であった。したがって、単純にそれらの平均値pSBPmを取ると、上記の関係は相殺されるので、rAI(%)とpSBPm-cSBPとの関係はフラットになる。このことは、pSBPmがcSBPに近似する理由の一つと考えられる。同様の結果は共同研究者の宮下らによって、ヒトにおいても確認されている。
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