研究課題/領域番号 |
23500524
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
矢澤 徹 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (30106603)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 心臓 / 不整脈 / 交互脈 / イオン / 数理モデル / 生理学実験 / 甲殻類 / 動物モデル |
研究概要 |
交互脈Alternansは死の予兆と言われる不整脈の1つで虚血性心疾患などで有名である。この不都合な脈が数理モデル(香川大学北島モデル)でなぜ出るのか、条件を探った。イオンの血中濃度、組織液濃度、そして細胞内濃度のような生理学因子のバランスが直接の因子と想定しシミュレーション実験をした。北島モデルは、矢澤(申請者)の研究したエビカニの心臓神経シナプス電位波形情報が使われ、2周期が出せる新型モデルである。矢澤の生理学実験を生かして、エビカニの体液や細胞のイオン組成をシミューレーションのパラメーターに使うことができた。各イオンを標準値から増減させる実験結果は意外であった。筋収縮にとって肝心要のイオンであるカルシウム(Ca)が主要因とされるのが常識的である(文献例Arce, Hら、Triggered alternans in an ionic model of ischemic cardiac ventricular muscle。2002ChaosVol.12)。ところが体液中にCaより大量にある塩(しお)の濃さの変化だけで交互脈が発生することを突き止めた。リアノジン受容体の遺伝的変異に起因しCa利用に障害がある重篤な状態ではなく、塩分取りすぎという程度の軽微な生活習慣偏移でもAlternans不整脈が発生しうることを突き止めた。驚くべき発見であった。治療はCaに行く前にNaやKからなのである。モデル研究と平行して心電図生理学研究を行い、ヒト、甲殻類(フナムシなど)、昆虫(オニヤンマなど)など多数の交互脈発生のReal Worldデータが収集できた。いづれの場合でも死期が迫ると交互脈があらわれ、交互脈が出なくなったら本当の死(心停止)が到来することが共通の現象として明らかになった。交互脈があらわれ、そして交互脈が消えたら命は終焉を迎えるということが結論された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
甲殻類の心臓の生理学データを元に完成した北島の数理モデルを使用し、甲殻類の心臓で起きることが分かっている交互脈を、生理食塩水濃度変化の心臓への影響にかんする、筆者の膨大な経験と知識をモデルに入れた。その結果、モデル製作者という工学者では気づかない多くの現象がモデルから吐き出され、モデルシミュレーションが大変有効だった。何より、私を含め誰もが予想する結果が覆された。心臓筋肉の問題は筋収縮の問題であり、したがってカルシウム濃度とカルシウム利用性の問題に帰結するという想定を覆す発見があった。勿論重篤な段階ではカルシウムが効いてくるのだが、今考えるべき現代の課題は、早期に病変を予防できるかどうかという、治療ではなく予防の医学の問題である。NaやKが原因になるという発見が示す意味は、原因は塩(しお)であるということである。不健全な心拍リズムの形成において、病気が重篤になる前の初期段階から塩分が重大な原因になっていることが数理モデルと動物モデルの協力で明らかになったことは大変異議深い結果であった。
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今後の研究の推進方策 |
交互脈という不整脈の治療にはNaやKのような日常的な食材成分のレベルから考慮すべきことが発見されたことで、筋肉=カルシウムという定型的な理解に進む以前に、塩の摂取から考えることが出来るような研究を深める。Naの細胞膜透過性および細胞内K濃度の変化がどう2周期発生に影響するか、その関連性を重点的に研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
特にデータ解析アルバイト経費および成果発表学会発表に関連する経費に使用する。
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