研究課題/領域番号 |
23500524
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
矢澤 徹 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (30106603)
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キーワード | 交互脈 |
研究概要 |
交互脈の発生を動物モデルで確認できた。甲殻類のフナムシLigia、イセエビPanulirus, アメリカザリガニProcambarus等で記録できた。甲殻類のみならず昆虫類でも全く同じ交互脈発生に関する原理原則があることが判明した。オニヤンマ、クマバチである。いずれも死の予兆と言われるとおり、死亡に向かって、ある時期出現する。心拍数が死にむかい上昇することは人でも、がん患者などで個人的な経験としても見てきたが、モデル動物でも全く同じであることが確認できた。心拍数上昇は、ペースメーカー細胞の膜電位が浅くなる、つまり、脱分極するからである。これはすなわち古典的ホジキンハックスレーモデルで明らかなように、カリウム(K)イオンが原因である。心筋細胞が死に向かい、壊死を生じ、その割合が増加し、壊死した細胞からは多量のKが、(本来体液組織液血液中に少ない濃度である)に出て、脱分極の原因となる、ということが、心拍数上昇の確認から明らかになったといえる。この脱分極にともなう交互脈発生が確認できたのである。これにより交互脈発生とKとの強い関係が明らかになった。数理モデルと動物モデル観察との同時監視による実績となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの心臓における交互脈発生メカニズムの研究に動物モデルを使用しているのだが、死に臨み例外なく甲殻類でも昆虫類でも交互脈が発生し、それは見事な2周期である。心筋の収縮のリズムをつくるペースメーカー細胞のリズムが死に臨みだんだん早くなる。早くなりつつある時点で2周期に分岐することが分かった。分岐は死ぬまで続くわけではなく、リズムが一層早くなるにつれて、ある時点で通常のリズムに戻る。ただし頻度は大変早い。この2周期発生の入り口と出口が存在していることが発見された。その発生機構には、数理モデルからKイオンの濃度やKチャンネルの透過性によって支配される領域があることが突き止められた。心臓リズムがこの領域に突入したら、死の予兆と言えるのである。この領域の存在の発見が現在ませの達成度である。
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今後の研究の推進方策 |
交互脈発生にとって、Kが重要であり、Kが最大の監視要因であることが明らかになった。このことにより、体液組成の最大イオンであるナトリウム(Na)イオンはどのように影響しているから当然気がかりとなった。Naは大量に組織液中に存在するわけであり、少々の濃度変化では生体反応を著しく変化させるはずがないが、その変化と2周期リズム発生との関係を、Kとの関係で見てゆく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際会議発表は論文発表と同時に行なう計画である。国際会議参加の経費としてまず使用する。実験では、不整脈記録から心拍ピーク検出、心拍解析作業を行うが大量のデータ処理作業をアルバイトで実施している。このために研究費を使用する。消耗品としてデータ保管管理用のハードディスクなど電気部品類を購入するほか、電気生理学関連消耗品を購入する。
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