研究課題/領域番号 |
23500525
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
山岡 禎久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80405274)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 光音響イメージング / 回折制御ビーム / 生体深部イメージング / 血管イメージング / 波面制御 / 周波数フィルタリング |
研究概要 |
本研究の主な目的は、(1)ベッセルビームを励起光として用いることによって生体内の散乱、吸収の影響を抑え、(2)発生する光音響波の周波数フィルタリングによって、生体における光音響イメージングの高深達化、高空間分解能化、高コントラスト化を行うことである。本年度は、特に後者、(2)光音響波の周波数フィルタリングに関して重点的に研究を行った。発生する光音響波の周波数スペクトルは、対象の形状や吸収係数によって変化する。発生する光音響波の周波数スペクトルの吸収係数依存性を測定した結果、吸収係数の増加に伴って光音響波の周波数スペクトルが高周波側に伸びていくことを明らかにした。さらに、励起光を強く集光することにより、同様に周波数スペクトルが高周波側に伸びることも明らかにした。この結果は理論と定性的に一致することを確認した。この結果をもとに、ラット精巣を取り出し、精巣小血管に対して低周波成分と高周波のノイズ成分を取り除くバンドパスフィルタリングを用いて光音響イメージングを行った。結果として、実際の生体に対しても光音響波の周波数フィルタリングが有用であることを明確にし、微細な小血管構造を高コントラスト、かつ、高空間分解能に捉えることに成功した。発生する光音響波の低周波成分は、主に生体全体の大きな構造体に起因するものと考えられた。さらに、光音響波検出に関しても、フラットな音響トランスデューサに変えて集音トランスデューサを用いることにより、10倍以上の検出感度向上に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、回折制御ビームを用いた光励起、および、発生する光音響波の周波数フィルタリングにより光音響イメージングの高深達化、高空間分解能化、高コントラスト化を目的としている。本年度、前者の回折制御ビームによる光励起に関しては、十分な実験結果が得られなかったが、後者の光音響波の周波数フィルタリングに関して、基礎的知見が得られ、その知見を利用し生体に対してイメージングを行うことにより、コントラスト、空間分解能の高いイメージングが可能であることを示すことができた。当初の予定では、回折制御ビームに関する研究を行い、その後、光音響波の周波数成分の研究を行う予定であったが、順序が変更になっただけで順調に研究目的を達成している。加えて、発生する光音響波検出のための音響トランスデューサの開発に関しても、検出感度向上のための基礎的知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、今年度、研究の順序が逆になってしまったため、次年度は回折制御ビームを用いた光励起に関する研究に関して重点的に行う。具体的には、回折制御ビーム作成のための光学系を構築、パラメータの最適化を行い、深達距離、空間分解能、コントラスト等の性能評価を行う。様々な回折制御ビーム作成法を試み、どのような方法が最適かを決定する。さらに光音響波の検出に関しても、生体内で信号を効率よく検出するために音響アキシコン等を用いた音響トランスデューサを試作し、検出系の構築、更なる高感度化を行う。その後、正常ラットの小血管(例えば、耳の毛細血管等)を対象として回折制御ビームを用いた光音響イメージングの検討を行い、深達距離、空間分解能の評価を行う。また、発生する光音響波の周波数に関しても更に詳細な検討を行う。その結果を踏まえ、実際の生体に対して、深達距離が長く、高空間分解能、高コントラストなイメージングを行うための条件の最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画としては、回折制御ビーム作成のための光学部品の購入、動物実験のためのラットの購入、音響アキシコン作成のための材料購入、学会発表のための出張費、参加費、および、論文投稿費を予定している。
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