研究課題/領域番号 |
23500525
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
山岡 禎久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80405274)
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キーワード | 光音響イメージング / 回折制御ビーム / 生体深部イメージング / 血管イメージング / 波面制御 / 周波数フィルタリング |
研究概要 |
本研究は、励起光学系、光音響波検出系の改良による光音響イメージングの空間分解能、深達距離、イメージコントラストの向上を目的としている。今年度は、①超音波周波数フィルタリングの最適化、②光パルス列変調による空間分解能の向上、③光パルス幅の光音響画像への影響解明、④対物レンズ走査による測定装置の改良を主に行った。 ①に関して、光音響画像の周波数フィルタリング依存性から、血液を入れたガラスチューブの断面画像は検出周波数範囲によって変化し、断面形状を捉えるのに最適な条件があることがわかった。実際にラットの精巣小血管のイメージングを行い、最適な周波数フィルタリングを用いて血管の断面を捉えることに成功した。②に関して、フェムト秒光パルス列を変調することにより積極的に時間波形を制御し、変調周波数の2倍で振動する光音響波を検出することにより空間分解能の高いイメージングに成功した。③に関して、パルス幅の違う3種類のレーザー(フェムト秒、サブナノ秒、ナノ秒光パルス)を用い、2光子励起光音響イメージングを行った。結果として、空間分解能は光学的に決定されるため、3種類のパルス幅で違いはあまり存在しなかったが、光音響波の発生効率はサブナノ秒の光パルスを用いた場合が一番高いことがわかった。④に関して、現在まで試料を走査することによってイメージングを行ってきたが、レーザー光源と対物レンズを光ファイバで結合し、対物レンズ位置を走査することによって、生体に対してin vivoの状態でイメージングすることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、高深達化、高空間分解能化、高コントラスト化などの光音響イメージングの高性能化を目的としている。本年度、光音響波の周波数フィルタリングの最適化、光パルス列の時間変調を用いた高空間分解能化、パルス幅の違う光パルス励起による光音響波発生の基礎的知見の取得、対物レンズ走査による高性能化に成功した。これらの装置の改良や知見を用いて生体に対してイメージングを行い、コントラスト、空間分解能の高いイメージングが可能であることを示した。当初の予定では、励起光の“空間的制御”、回折制御ビームを用いた研究を先に行う予定であったが、励起光の“時間的制御”、変調光パルス列を用いたイメージング、パルス幅依存性などの研究を行い、光音響イメージングの性能向上という研究目的を順調に達成している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、今年度は励起光の“時間的制御”による光音響イメージングの性能向上に成功したが、次年度は励起光の“空間的制御”による光音響イメージングの性能向上を示す。具体的には、様々な空間制御ビーム作成(例えば、回折制御ビーム)のための光学系を構築、パラメータの最適化を行い、深達距離、空間分解能、コントラスト等の性能評価を行う。どのような励起光を用いると光音響イメージングの性能が向上するかを明らかにする。光音響波の検出に関して、音響トランスデューサのノイズが光音響波検出の感度やイメージングの速度を制限する一因となっているため、ノイズ源の特定、増幅器、周波数フィルタリングの改良を行い、更なる高感度化を目指す。その後、正常ラットの小血管(例えば、耳の毛細血管等)を対象として、深達距離、空間分解能、コントラストの評価を行う。また、発生する光音響波の周波数に関しても更に詳細な検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画としては、励起光学系改良のための光学部品の購入、光音響波検出系改良のための電子機器、音響素子の購入、動物実験のためのラットの購入、学会発表のための出張費、参加費、および、論文投稿費を予定している。
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