本研究の目的は、光励起手法、光音響波検出手法の改良によって光音響イメージングのコントラスト、光音響波の検出感度、空間分解能、深達距離などの性能を向上させることにある。光励起手法に関して、ナノ秒からフェムト秒の広い範囲のパルス幅を有するパルスレーザーを用いて、光音響イメージングの性能評価を行った。特に、ミリメートルを超える生体深さにおいて深さ識別能の向上が期待できる2光子励起光音響イメージングを対象にした。2光子励起と1光子励起の光音響波のパルス幅依存性から、1光子光音響波はパルス幅が変化しても一定であるが、2光子光音響波はパルス幅が狭くなると信号の増強が可能であることが明らかとなった。得られた知見から、我々はパルス幅の異なる超短パルスによる光音響画像減算法を提案した。その結果、2光子励起による光音響波を選択的に抽出することができ、コントラストが向上し、断面像の正確な評価が可能であることがわかった。また、アキシコンを用いた光励起手法は、更なる深部において威力を発揮すると考えられるが、まだ十分な結果を得ていないため、今後も研究を継続していく予定である。 光音響イメージングは光の高コントラスト特性と超音波の生体長距離伝搬特性の両方を活かした方法であり、生体深部を高コントラストに観察可能である。一般的な生体イメージングと異なり、観察深さに依存して様々な光音響手法を選択できる。今回得られた知見や技術は光音響イメージングの高度化に直結するため、生体深部の診断装置開発に役立つと考えている。
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