消化管腫瘍の早期診断に通常光による内視鏡検査は必須であるが、検出感度に限界がある。それを補うものとして自家蛍光内視鏡が使われるが、現在臨床で用いられる自家蛍光内視鏡は、粘膜下層由来のコラーゲン自家蛍光を主に利用することで腫瘍を間接的に検出する。しかし、偽陽性症例も少なからず見られ、誤検出を減らすことは自家蛍光内視鏡の一つの課題といえる。消化管粘膜はnicotinamide adenine dinucleotide(NADH)やflavin adenine dinucleotide(FAD)などの自家蛍光物質を含んでおり、それらを利用することで腫瘍を直接検出できる可能性がある。腫瘍は初期段階から微小血行動態の欠陥等により低酸素状態にあるといわれる(J Bull Cancer 2006;93:E73-80)。また、自家蛍光物質であるNADHは細胞の代謝状態に関連して蛍光強度が変化し、細胞が低酸素状態に陥るとNADH蛍光強度は上昇することが知られる(Science 1982;217:537-40)。本研究では、分光イメージング、スペクトル解析等を行い、腫瘍および非腫瘍の蛍光特性を詳細に検討し、NADH蛍光に着目した腫瘍イメージングの開発・改良を行った。蛍光レシオ画像を作成することで正常部と病変部が発する蛍光の差異を強調することが可能であり、NADH以外の蛍光物質の影響など詳細な検討を行い、学術論文投稿準備をすすめている。
|