研究課題/領域番号 |
23500529
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
古川 裕之 北里大学, 一般教育部, 講師 (20406888)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | OCT / 医用生体工学 / 光干渉断層計測 / 偏光 / 生体計測 |
研究概要 |
老視(老眼)や白内障等の水晶体で生じる眼の疾患を機能学的に解明する目的で、角膜前面から水晶体後面までの前眼部全体の内部構造が撮像可能な全前眼部撮像光コヒーレンストモグラフィー装置の開発と改良を行った。平成23年度前期は、光ファイバー部品の再選定と最適化を行うと共にヒューマンインターフェースを改良した。本装置を用いて前眼部全体を撮像し、眼の焦点調節と加齢に伴う前房深度、水晶体前後面の曲率半径および水晶体厚の変化の定性的観察と定量的解析を行った。解析の結果、40歳未満の個々の水晶体厚は調節によって平均0.24mm増加すること、水晶体の後面曲率は調節によって減少する(ただし、加齢の影響は顕著ではない)が減少割合は水晶体の前面曲率の方が大きいこと、調節に関連する水晶体の変化は一般的に加齢に伴い減少することを明らかにした(論文投稿済)。これらの発見により、本装置は調節メカニズムの理解に役立ち、老視管理にも適用できることがわかった。平成23年度後期は、水晶体の内部構造をより鮮明かつ高速に撮像するために、以下に示す二つの開発を行った。1、干渉信号の取得に用いるジッターの少ない高精度なクロック回路の開発。2、1で開発したクロックと完全に同期し、安定に干渉信号が取得できるデータ取得ボードと制御プログラムの開発。1、2で開発した電子部品と制御プログラムを前期に改良した装置に組み込んだ結果、本年度開始時点では112dB程度であったシステム感度を114dBまで向上させることに成功した。また、16μm程度であった奥行方向の分解能は13μmまで向上し、毎秒1枚(横方向500本)程度であった描画速度を毎秒12枚まで高速化することにも成功した。これらの性能の向上によって、前嚢、後嚢、皮質および核などの水晶体の内部構造を明瞭に可視化することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画目標である、角膜前面から水晶体後面までの前眼部全体の内部構造を非接触で撮像可能な全前眼部光コヒーレンストモグラフィー装置の高感度化に成功したからである。また、本研究目的の1つである、眼の焦点調節と前房深度、水晶体前後面の曲率半径および水晶体厚の変化との関係を機能学的に明らかにすることもほぼ実現できたからである。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に開発した全前眼部光コヒーレンストモグラフィー装置に偏光機能を付加した、偏光感受型の光コヒーレンストモグラフィー装置を開発する。そして、in vitroでの偏光計測を行った後、この装置を臨床現場に設置する。臨床現場では、現在共同研究を行っている眼科医師の協力のもと、多数の患者を撮像し、臨床データの蓄積と解析を行いつつ装置の改良も並行して進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の助成金は、偏光感受型全前眼部光コヒーレンストモグラフィー装置の開発に必要な偏光部品を購入にするために用いる。開発当初に設計した干渉計でも偏光情報を取得することは可能であるが、光の位相は動きに敏感であるため、データの取得はより高速であることが望ましい。そこで、より高速で高精度な偏光情報の取得方法を検討した結果、平成23年度に購入を予定していた偏光部品の再選定が必要となったことが、次年度繰越の研究費の生じた理由である。また、平成23年度に購入する予定であった物品の仕様を変更しただけなので、現段階では、平成24年度以降に請求する研究費の使用計画についての変更はない。
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