研究課題/領域番号 |
23500529
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
古川 裕之 北里大学, 一般教育部, 講師 (20406888)
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キーワード | OCT / 医用生体工学 / 光干渉断層計測 / 偏光計測 / 生体計測 |
研究概要 |
平成23年度に開発した全前眼部撮像光コヒーレンストモグラフィー(optical coherence tomography, OCT)装置は、眼の調節メカニズムの理解に役立つだけでなく、老視の管理にも適用できることを論文にて報告した。この全前眼部撮像OCT装置を用いた臨床研究は、研究成果を報告した後も継続して行われた。特に、撮像の困難な高齢者を中心に臨床測定を行い、本OCT装置の「使いやすさ」と「臨床機器としての有用性」を検討した。また、角膜前面後面および水晶体前面後面の曲率半径をより正確に測定する事を目的として、従来の2次元断層撮像に加えて3次元の立体撮像を可能にするためのOCT装置そのものの計測プロトコルの改良も行った。この改良の結果、200×100のAライン本数から構成される立体像のOCTデータを約1秒で取得することが可能となった。さらに、偏光感受型全前眼部撮像OCT装置の光学系の再設計を行った。この偏光感受型OCT装置用の光学系は、従来使われてきた偏光調整器や位相調整器などの付加的なデバイスを一切必要とせず、一回の撮像で偏光情報が取得できるため、撮像速度とコストの両方の面で平成23年度に設計した偏光感受型OCT装置用の光学系よりも優れたものになっている。そして、この偏光感受型OCT装置に必須なデバイスである2チャンネル完全同時収録可能な高速・高分解能データ収録ボード(DAQ)をDAQメーカーと協力して開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究目的の1つである、眼の焦点調節と前房深度、水晶体前後面の曲率半径および水晶体厚の変化の関係を機能学的に明らかにすることができたが、平成24年度の研究計画目標である偏光感受型全前眼部光OCT装置の完成には至らなかったからである。平成24年度当初の設計では、位相調整器を用いた偏光感受型OCT装置を開発する予定であった。しかし、海外のOCTグループによる報告を検討した結果、光学系の見直しが必要となったため、平成24年度は位相調整器が不要な光学系を再設計する期間とし、実際の装置の完成は平成25年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に再設計した光学系に基づいて、位相調整器などの付加的なデバイスの不要な偏光感受型全前眼部光OCT装置を完成させる。そして、in vitroでの偏光計測を行った後、この装置を臨床現場に設置する。臨床現場では、共同研究を行っている眼科医師の協力のもと、白内障患者を撮像し、水晶体内部における複屈折の変化を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の助成金は、偏光感受型全前眼部光OCT装置の開発に必要な偏光部品の購入と国際会議に出席するための旅費に用いる。開発当初に設計した干渉計でも偏光情報を取得することは可能であるが、光の位相は動きに敏感であるため、データの取得はより高速であることが望ましい。そこで、より高速で高精度な偏光情報の取得方法を検討した結果、平成24年度に購入を予定していた偏光部品の再選定が必要となったことと研究成果の発表を先送りにしたことが、次年度繰越の研究費の生じた理由である。また、平成24年度に購入する予定であった物品の仕様と出席する会議を変更しただけなので、現段階では、平成25年度に請求する研究費の使用計画についての変更はない。
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