研究課題/領域番号 |
23500530
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
田村 典子 東海大学, 医学部, 助教 (90439703)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 血小板 / カルシウムイオン / 血流 / シグナル / イメージング |
研究概要 |
「研究の目的」本研究ではこれまでに確立されたex-vivoの血流条件下の血小板血栓形成モデルをもちいて、血管壁損傷部位に相当するコラーゲンおよびフォンビルブランド因子 (VWF)上に最初に接着した血小板カルシウムイオン[Ca2+]iについて高速共焦点レーザー顕微鏡によるリアルタイムイメージングおこなう。コラーゲンおよび VWFからの刺激による 血小板内[Ca2+]iの詳細な局在をナノレベルでイメージングすることにより、血小板活性化の初期シグナル伝達にかかわる因子を明らかにする。「研究実績」血流条件下、 VWFおよびコラーゲン刺激に起因する単一血小板の活性化を1)CCDカメラによる高速共焦点レーザー顕微鏡を用いて経時的な[Ca2+]iの変化を観察した。ヒト動脈血流速度に相当する壁ずり速度1500 s-1の条件下では、VWFおよびコラーゲンの血小板[Ca2+]iの上昇パターンに差が認められた。VWFに接着した直後の単一血小板では総[Ca2+]i最大417.8±153.5(nM)、最小31.1±7.8(nM)の一過性の増加が認められた。一方、コラーゲンに接着した単一血小板では複数回[Ca2+]i の上昇が、特にコラーゲン接着直後 (200.5±80.5nM)と最後の[Ca2+]i上昇(175.7±52.0nM)では高値を示した。またマトリクス接着から最初の[Ca2+]i上昇までにVWFでは8.5±1.9秒、コラーゲンでは 5.9±4.2秒と反応時間差が認められた。2)現在新規導入したより解像度の高いCCDカメラによるナノレベルのイメージングおよび局在解析を行っている。マトリクスに接着した単一血小板を30x30の格子状(900分画)に分割し(1分画は77nmに相当)血小板2-4μmの細胞内[Ca2+]i局在について各分画それぞれについての[Ca2+]iについて検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血小板のカルシウムイオンの局在化イメージングについては、本年度の研究費による高性能CCDカメラの新規購入を予定していたため、予算執行の遅れにともない実行が間に合わない部分があった。血小板内カルシウムイオンの局在以外の、血流条件下VWFおよびコラーゲンから誘導される血小板活性化にともなうカルシウムイオンの経時的な濃度変化に関する課題はこれまで本研究室で使用していたI-IユニットCCDカメラにより実行された。血管壁損傷部位に相当するVWFおよびコラーゲンに起因するカルシウムイオンの増減パターンが異なることから、両者は異なるシグナル伝達系をとおることをイメージングにより実証することができた。本年2月以降の新規CCDカメラの導入後、血小板カルシウムイオンのイメージングについて、詳細なデータが取れることが確認され現在データの蓄積と解析を行っている。当初50x50の格子(2500分画)による血小板カルシウムイオンの局在解析を予定していたが、カメラの解像度の限界もあり30x30の格子 (900分画)に変更する必要性がでてきた。1分画あたり77nmと当初の予定よりも大きな格子で解析することになるが、血小板2-4μmの細胞内分割としては十分のサイズと考え、現在解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
高性能CCDカメラの導入による画像解像度の改善により、より詳細なカルシウムイオンの局在を得ることが可能になった。それに伴い、30フレーム/秒による動画記録では詳細なカルシウムイオンの拡散をとらえるには不十であることが明らかになった。現在、60フレーム/秒さらに120フレーム/秒で記録することを検討し、活性化に伴うカルシウムイオンのより詳細な挙動を検討している。今後、30x30の格子に分割した個々の分画のカルシウムイオン濃度の経時的位置変化から、カルシウム貯蔵庫からのカルシウムイオン細胞内放出、また細胞外からのカルシウムイオンの流入について、血小板が各マトリクスに接着し活性化(特に初期活性化)していく過程をイメージングにより明らかにする。本年度で確立したカルシウムイオン局在のイメージング方法に基づき、血小板活性化受容体の中でもADP受容体P2Y12,トロンビン受容体PAR-1,コラーゲン受容体GPVIについて、それぞれ阻害薬を用いてコラーゲン、VWF上の血小板内カルシウムイオンの局在動態への影響を詳細にイメージングする。各血小板活性化受容体による細胞内カルシウム貯蔵庫からのカルシウムイオンの放出、および細胞外からのカルシウムイオンの流入への影響を可視化することで、血小板初期活性化への各シグナル伝達系の関与について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度研究費により新規導入したEM-CCDカメラを用いて次年度では引き続き1)血小板カルシウムイオンの局在イメージングの精緻化、2)血流条件下、VWFおよびコラーゲンに起因する血小板初期活性化に関与する因子について各種受容体阻害薬を用いて、カルシウムイオン局在イメージングにより実証する。そのため次年度の研究費の使用内訳として、阻害薬の購入、およびカルシウムイオン感受性色素Fluo3 AMまたは、蛍光強度の増幅として同系列の色素Fluo4 AMの購入を予定している。
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