研究課題
血液からのAβ除去によって脳内Aβを減少させ、アルツハイマー病を治療する医療機器の創製を行っている。血液透析により血中Aβが除去できるという今までの知見に基づき、透析によって脳内Aβがどう変化するかを中心に、脳病理の横断的研究および少数例の前向き研究により検討した。1.脳病理からの横断的解析:血液透析群16名(75.8±9.8歳)および非透析対照群16名(79.0±12.5歳)の脳を抗Aβ抗体で染色した結果、透析群は対照群に比して、瀰漫性老人斑数、コアが明確な老人斑とも有意に少なかった。血中からのAβ除去で脳Aβが減少することが示唆された。2.前向き研究(1):合計5例の腎不全患者について、透析導入前から導入後までフォローした。血中Aβ1-40、Aβ1-42、Aβオリゴマとも透析導入によって顕著に低下した。認知機能については、透析導入前でMMSEが25,27点であった2症例は導入後に満点の30点に改善した。PIBプローブによる脳Aβイメージング(PET)では、透析導入後125日および320日後(各々別症例)の測定では、脳内Aβ沈着は両症例とも陰性であったが、透析導入前の状態が測定できなかった。MRIで追跡している別の症例は、透析導入98日前および透析導入直後も海馬萎縮はみられず、現在、1年後のMRIを検討中である。3.前向き研究(2):透析患者29例について、ベースラインおよび2ndライン(18ヶ月または36ヶ月後)のデータを取得した。MMSEは平均27.5点及び27.2点となり認知機能は維持された。血中Aβ1-40は2ndラインで有意に低下し、Aβ1-42は有意に上昇した。4.Aβ除去に適した素材及びデバイス形状の検討:Aβモノマは、吸着が主な除去機構であり、ポリスルホンやPMMAなどの疎水性の高い素材での除去率が高かった。
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Journal of Artificial Organs
巻: 16 ページ: 211-217
10.1007/s10047-012-0675-z