研究課題/領域番号 |
23500533
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩行 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (60113148)
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研究分担者 |
山本 衛 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (00309270)
竹森 久美子 近畿大学, 農学部, 講師 (00288888)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エラスチン / 動脈 / 皮膚 / 結合組織 / バイオメカニクス |
研究概要 |
エラスチンは弾性線維の主たる構成成分であり、その性状の変化は臓器組織の機能に重要な影響をおよぼす。様々な病変や老化に伴ってエラスチンの変性や分解が生じることはよく知られているが、その修復に関する知見は殆ど得られていない。本研究では、比較的安全性の高い魚類由来のエラスチン分解産物が組織の機能や病変の改善に有効であることを検証することを目的として、ラットにエラスチンペプチドを投与し、大動脈および皮膚の形態や機能に及ぼす影響を生体力学的・分子生物学的および病理組織学的に検索した。1.大動脈に及ぼす影響:高血圧自然発症ラット(SHR)では、血圧の上昇とともに大動脈の内皮細胞の傷害や伸展性の低下が認められるが、エラスチンペプチドあるいはその分解産物であるprolyl-glysinを投与したラットでは、内皮細胞傷害は明らかに軽度であり、且つフェニレフリンに対する収縮反応の抑制や壁の伸展性の改善が認められた。しかし、結合組織蛋白の発現には有意の差は認められなかった。すなわち、エラスチンペプチドあるいはその分解産物は、内皮細胞を障害から保護することにより動脈機能の改善に寄与することが示唆された。2.皮膚の構造・機能に及ぼす影響:ヘアレスラットを用いてエラスチンペプチド含有軟膏を塗布し、皮膚の性状を組織学的に観察するとともに、伸展性に及ぼす影響を生体力学的に検索した。塗布群では皮膚の表面は非常に滑らかで、角質の割合は対照群に比べ少ない傾向が認められた。また皮膚の伸展性は塗布群で高く、且つ結合組織関連蛋白(CTGF, collagen, elastin)の発現の亢進が認められた。これらの実験結果から、魚類由来のエラスチンペプチドには組織保護作用があることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験により、当年度の実験計画のうち、動脈壁および皮膚に及ぼす影響に関しては、実験計画時に想定された仮説をある程度証明することができた。しかし、未だ確証には至っておらず、また皮膚の病態モデルを用いた実験は終了していない。
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今後の研究の推進方策 |
1.動脈に及ぼす影響に関して高血圧病態モデル(SHR)を用いて大動脈壁に及ぼす影響を検討したが、さらに総頸動脈や腸間膜動脈など、より末梢の動脈の機能に及ぼす影響を検討する。2.皮膚に及ぼす影響に関してヘアレスラットを用いて、外科的部分切除による創傷モデルや紫外線照射による光老化モデルを作成し、エラスチンペプチドの予防・治癒効果を検証する。3.培養内皮細胞・培養ケラチノサイトを用いて、増殖や分化に及ぼすエラスチンペプチドの影響に関する実験を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
大部分を消耗品費に充てる。1.実験動物(SHRおよびヘアレスラット)の購入,2.培養細胞(血管内皮細胞およびケラチノサイト)の購入,3.発現解析用試薬(プライマー、キット等)の購入,4.免疫組織学的検索のための抗体の購入,5.細小動脈機能解析用装置の開発・改良
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