研究課題/領域番号 |
23500537
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山根 隆志 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10358278)
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研究分担者 |
西田 正浩 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (80357714)
松田 兼一 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (60282480)
山本 健一郎 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00434316)
丸山 修 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (30358064)
小阪 亮 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10415680)
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キーワード | 除水装置 / 遠心ポンプ / ろ過膜 / 溶血 |
研究概要 |
心不全あるいは腎不全のために緊急に除水を必要とする患者から、簡便かつ安全に除水する可搬型除水システムを開発し、救急医療のほか在宅医療、ひいては被災地医療にも使える除水システムを提供することが研究目的である。このため、小型遠心ポンプ及び末梢静脈へのバスキュラーアクセス(カテーテル)を用いた、体外循環血液ろ過装置を開発する。 平成24年度には、羽根直径30mm、ポンプ外径70mm、モータ厚さ8mmは前モデルと同じであるが、流入・流出径を3.4mmから5.0mmに拡大し、流入口を直角折曲り管から円弧曲り管に変更した新型遠心ポンプ(DP3)を試作し、性能試験と溶血試験と模擬血栓試験を実施した。性能試験では回転数1500 rpmで圧力30 mmHgが出るが、圧力損失の低下により最大流量が650 mL/minから1300 mL/minまで増加した。溶血試験では、クエン酸を添加したウシの1日保存血500mLをポンプ回路に充填し、4時間37℃に維持した。その結果、流量50mL/min、圧力30mmHg(回転数1500rpm)の条件で、ピボットが摩耗した球面接触状態では、血漿中遊離ヘモグロビン量が168 mg/hとなり、体外循環の標準溶血量(BPX80圧力200mmHg、流量4L/min時に211mg/h)の約80%とあまり芳しくない溶血成績であった。しかしピボットが新しい点接触状態では血漿中遊離ヘモグロビン量が13 mg/hとなり、体外循環の標準溶血量(249 mg/h)の約5%と良好な溶血成績をおさめた。模擬血栓試験では、閉回路の血液を2時間37℃、凝固能ACT=170~190sに維持し、DP2およびDP3とも、モノピボット軸受周りにはリング状の血栓形成があるものの、それ以外にろ過に影響を与えるような血栓は観察されなかった。これによりポンプ単体試験では、目標性能が達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は3月8日に全体会議を行って、実験結果の評価と研究指針の設定を行なった。新規に開発した遠心ポンプを使って、動物血による溶血試験結果が市販体外循環状態の5%という、ポンプ単体としては良好な溶血成績をおさめたので、おおむね順調と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、新規開発した遠心ポンプにヘモフィルターも接続して、血液を用いたシステムの除水特性評価試験を行なうとともに、成果について学会発表を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に向けて、開発目的を長期在宅治療および救急車中の治療に設定し、透析液を用いないろ過方式で可搬型システムを実現する。キット化ではアタッシュケースに入る程度のシステムとするため、ポンプ及びコントローラは平たい形状にし、モータは取外し可能な構造にする方針を立てた。概念設計の後、ポンプ及び透析器のキットを組んで、血液を用いた溶血試験と抗血栓試験を行う計画である。
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