研究課題/領域番号 |
23500538
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
張 曄 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教育研究支援者 (70436179)
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研究分担者 |
井奥 洪二 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (60212726)
工藤 忠明 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50431606)
清水 良央 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30302152)
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50292222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / 再生医工学材料 |
研究概要 |
生体吸収性材料として新たに開発された水熱ハイドロキシアパタイト(Hydrothermally synthesized HA; HHA)は、従来の焼結ハイドロキシアパタイト(stoichiometric hydroxyapatite; SHA)と比較し、破骨細胞の骨吸収活性を高めることが知られているが、その作用機構はほとんど解明されていない。そこで本研究では、異なる性質をもつHHAおよび従来型SHAを利用し、分子生物学的手法により、破骨細胞の骨吸収活性をより亢進させるメカニズムを明らかにすることで、吸収制御が可能な新しい医療用セラミック開発のための基礎技術を獲得することを目的とし、当該年度に、下記の通り研究を行った。 まず、第1段階として、Ca/P比やアスペクト比が異なる吸収性HHAディスクの作製を行った。吸収性を付与するために、α-TCP粉末を金型に入れ成形し、水熱処理によりCa欠損のHAディスクを作製した。この際、処理用水のpH(4~11)、処理温度(105~200度)を変化させることで、Ca/P比とアスペクト比が異なるHHAディスクの作製が可能となる。なお、SHAはHA粉末を焼結法にて作製した。作製したHAディスクは、SEM-EDXでCa/P比を測定、X線回折(XRD)とフーリエ変換型赤外分光(FT-IR)で表面構造とアスペクト比を測定し、さらにHHA(Ca/P比が1.6と1.55)およびSHAディスクをCO2インキュベータ内で培養液に浸漬した後、イオンの溶出を測定した。 第2段階としては、吸収性HHAおよびSHAディスクを利用し、各ディスク上培養による破骨細胞への影響を評価した。具体的には、細胞増殖・細胞分化・骨吸収能の評価、および破骨細胞分化に関連する遺伝子発現の網羅的解析を行ったところ、生体吸収性を持つHHAで破骨細胞活性の上昇が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究実施計画については、ほぼ予定通り完了しており、年度内の到達目標は、ほぼ達成していると考えられるため。今後は、得られたデータをまとめて、学会発表や論文投稿に繋げていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして、継続して下記の研究を行う予定である。(1)SHAディスク上のRAW細胞培養を比較対照としながら、HHAディスク上培養での特徴的なタンパク質分子を2次元電気泳動法により網羅的に抽出する。→得られた結果は、HHA依存性に破骨細胞分化誘導の調節を担うシグナル伝達経路の特定に活用する。(2) 阻害剤によるシグナル伝達経路の特定する。平成23年度に行った遺伝子発現量の網羅的解析、および活性化されたタンパク質の網羅的発現解析により同定された結果をもとに、HHAディスク上での破骨細胞の培養により活性化され、破骨細胞内RANKLシグナルを促進し、骨吸収を促進すると考えられるシグナル伝達経路を特定する。特にHHAとSHAでは、Ca/P比やアスペクト比が異なることに着目し、(1) 溶出イオン由来シグナル (例:Caイオン流入等)、(2) 接着斑由来シグナル (例:RhoやpaxillinによるLIMKシグナル等)のいずれかに差があると仮定し、(1)および(2)に由来するシグナルの抽出に注力する。(3) 特定されたシグナル伝達経路と溶出イオンや細胞接着との関係の検討し、平成23年度の実験により特定されたシグナル経路について、イオン溶出由来シグナルまたは接着斑由来シグナル(もしくはその他のシグナル経路)によるRANKLシグナル経路の調節メカニズムを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞学および材料学的検討はすべて東北大学にて実施することが可能である。破骨前駆細胞株RAWとGFP蛍光標記骨芽細胞は当研究室にて保有している。EDX,SEM,フーリエ変換型赤外分光装置 (FT-IR)など材料分析機械は歯科研究科で保有しており、研究科内で実施することが可能である。これらの実験に必要な消耗品を物品費(薬品・試薬類およびガラス器具購入)として計上した。DNAマイクロチップを用いた検討にはRNAの抽出が必要になるが、RNA抽出量が重要な問題となるため、どの程度の量が採取可能かについて予備検討する必要がある。このため、RNA抽出に必要な試薬なども早期に購入する予定である。破骨細胞分化誘導系(in vitroモデル)による解析に必要な消耗品については、薬品・試薬類費用(培養細胞実験用)の物品費として使用予定である。 また、本研究における研究成果発表および研究調査のための旅費、および研究補助や資料収集・整理のための人件費も使用予定である。
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