研究課題/領域番号 |
23500540
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
永井 亜希子 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (40360599)
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研究分担者 |
山下 仁大 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (70174670)
中村 美穂 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (40401385)
堀内 尚紘 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (90598195)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオセラミックス / ステント / コーティング / 血管適合性 |
研究概要 |
平成23年度は、ステント用金属基板の表面改質法とその評価を行った。コバルトクロム合金の一つであるMP35N(Co-Ni-Cr-Mo-Ti)に、陽極酸化法で生体親和性セラミックスである酸化クロムの薄膜コーティングを作製し、評価した。まず、金属基板の不動態皮膜について検討した。大気中で形成されるコバルトクロム合金の不動態皮膜の主要組成は、数ナノメーターの酸化クロム層であり、この皮膜により金属基板に耐腐食性や耐摩耗性といった特性が付与される。MP35Nの生体内での反応を知るために、この不動態皮膜の性状が擬似体液(ハンクス溶液)に浸漬することで起こる変化を詳細に調べた。結果は、文献1にまとめた。X線光電子分光測定の結果、酸化層は、主に酸化クロムで形成され、金属アレルギーの原因となる酸化ニッケルは、皮膜表面にほとんど現れないことが分かった。この研究によりMP35Nは生体内で生体親和性を持つ皮膜を形成することが分かったが、新しい機能を付与するには、数ナノの膜厚では足りないので、陽極酸化法にてマイクロレベルの厚さを持つ酸化クロム膜の作製を目指した。電気化学的分極曲線を用いて、陽極酸化の最適条件を検討した。不動態域から過不動態域に変化する電位を選択し、膜厚が1-2μmの膜を作製することに成功した。その表面形態を走査型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡で解析した。表面性状や化学組成は、接触角測定やX線光電子分光で測定し、不動態皮膜に近い性状であることが分かった。このコーティング膜は、不動態皮膜に比べて、血管内皮細胞や血小板に対する生体適合性が良いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コバルトクロム合金基板に、膜厚1-2μmの、バイオセラミックスをコーティングすることができた。用いた金属基板の表面性状の評価を行い、その基板にコーティング膜を陽極酸化法で作製した。コーティング膜の表面形状や化学組成などの物性評価を、走査型電子顕微鏡やX線光電子分光で検討した。血管適合性について、培養細胞と血液を用いたin vitroの検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、作製したコーティング膜を電気分極処理を行ったが、その静電気力量の測定に至らなかった。それは、作製した膜が、推測に反して、絶縁性を維持できなかったのが主因であると考えている。平成24年度では、計測系を含めた再検討を、走査型ケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)を中心に行い、再測定する。コーティング膜の血管適合性について、培養細胞や血液を用いたin vitroの検討をさらに進め、分子生物学的手法を用いた遺伝子レベルやタンパク質レベルの検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.金属基板等材料費:培養細胞、血液を用いたin vitroの検討用や、動物実験用に適した材料の形態の検討用など2.測定用プローブ:KFM用のカンチレバーなど3.分子生物学的検討用試薬:試料用カラム、抗体、PCR用試薬など
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