研究概要 |
プリオンペプチドの立体構造変化に特に重要なはたらきを示すサイト及びアミノ酸残基を明らかにするために, マウスプリオンタンパク質 のアミノ酸配列に点変異を導入し, moPrP ミュータントを作製した. Wild-Type (WT) の他, 5 種類の moPrP ミュータントを用意した. タンパク質の二次構造に対して特徴的なスペクトルを示す円偏光二色性 (Circular Dichroism: CD) はタンパク質の構造変化の観測に有用であることから, moPrP ミュータントの pH 依存構造変化を観察することを試みた. WT と D177N ミュータントの結果は、WT では中性 pH から酸性 pH への変化によって, 210 nm 付近の負のピークが短波長側へシフトしながら増加した. また, D177N ミュータントでは, 中性 pH と酸性 pH において不規則構造を示す 200 nm に負のピークが現れた. さらにmoPrP ミュータントにおける CD スペクトル測定から, 177 番目のアミノ酸 アスパラギン酸 における アスパラギン への変異と, 中性 pH から酸性 pH への変化が PrP の構造変化に大きな影響を与えていることが示された. 中性 pH から酸性 pH への変化によって, 解離定数 pKa = 6.04 をもつ His176 のイミダゾール基の窒素がプロトン化され, その結果, R163 との間あった塩橋が崩壊したと考える. 神経毒性領域におけるペプチドを 4 種類用意し, ペプチド 1 モル当量に対し 0-2 モル当量の銅溶液を加え, 近紫外領域において CD スペクトルを観測し, 銅イオンとの結合によってアミド窒素とイミダゾール窒素が 銅イオンとペプチドとの結合に関与して構造が変化することが明らかとなった.
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