研究概要 |
最終年度は、pH変化に伴うペプチドの構造変化に対する金属イオン結合の影響を調べるため、電位差滴定実験によるヒトプリオペプチドと金属イオンの結合性の観察を実施した。ヒトプリオンタンパク質 (huPrP) の金属結合領域(90-126番残基) 中のHis96を含むhuPrP 93-102 を試料とした. 濃度50uMのhuPrP 93-102にCu2+, Ni2+, Co2+をそれぞれ等モル当量となるように加え, pH測定を行った. 金属イオンの結合による滴定曲線の変化が生じたことから, huPrP 93-102と金属イオンとの結合性が示唆された。さらに、円偏光二色性分析と紫外/可視吸光測定を用いてペプチドと金属イオンの結合性について実験を行った。 huPrPと金属イオンとの結合において, 金属イオンの種類やアミノ酸配列によって結合性や配位形態が異なるということが示唆された. また, huPrP 93-102とhuPrP 95-105のCDスペクトルの違いから93番目と94番目のグリシンが結合に関係していることが示唆された。 さらに、アミノ酸配列による金属結合性の変化の詳細を調べるため、huPrP 93-102において93番と94番のグリシンをアラニンに置換したhuPrP G93A/G94AとhuPrP 95-102について金属イオンとの結合性を調べた. 500 uMの各ペプチドに各金属イオンを等モル当量になるように加え, pH 8.1におけるCDスペクトルおよび吸光スペクトルを測定した. CDスペクトルから93番と94番のグリシンが金属結合において重要な役割を持っていることが示唆された.
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