研究課題/領域番号 |
23500548
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村林 俊 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30200306)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 物理的DDS |
研究概要 |
変動磁場による抗ガン剤効能増強作用に着目し、各種の細胞-抗ガン剤系における磁場効果を広範に評価し、その作用機構を明らかにすることが本研究の目的である。 予備実験において、変動磁場は細胞膜透過性が低い抗ガン剤の効能を高めることが示唆された。そのため、本年度においては、まず、細胞膜透過性が低いブレオマイシンにおいて実験を行った。用いた細胞は、A549、HCT116、ACHNであった。ブレオマイシンの濃度を100μM/mlから0.01μM/mlまで対数希釈し培養系に添加し、磁場印加群と非印加対照群の細胞数をSRB法にて評価した。加えた磁場は、最大磁場強度3mT、周波数50Hz、矩形でduty50%とした。その結果、ブレオマイシンにおいては、磁場印加群と非印可群において、3日間培養後の細胞数に有意な差は見られず、これらの細胞においては磁場効果が生じないことが明らかとなった。 予備実験において磁場効果が見られたダウノルビシンの類似体であるアントラサイクリン系抗ガン剤について磁場効果を検証した。用いた抗ガン剤は、ドキソルビシン、ピラルビシン、イダルビシン、ファルモルビシンであり、ダウノビシンにおいて磁場効果が見られたA549細胞を用いて実験を行った。ブレオマイシンの実験と同様に対数希釈した抗ガン剤を培養系に加えた。その結果、全ての抗ガン剤において磁場効果は見られなかった。その結果、ダウノルビシンの構造に磁場効果を高める何らかの要因があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、各種細胞-抗ガン剤の組み合わせにおける磁場効果を検証する計画であり、ブレオマイシンと各種アントラサイクリン系抗ガン剤における磁場効果を調べることは予定通り行った。しかし、アントラサイクリン系抗ガン剤の細胞内取り込み量の測定は、行わなかった。その理由は、ダウノルビシン以外に磁場効果が現れなかったためである。計画では、細胞膜の透過性を薬剤処理により変化させることも予定していたが、行っていない。
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今後の研究の推進方策 |
ブレオマイシンと各種アントラサイクリン系抗ガン剤において磁場効果が見られなかったため、当初の計画通りに研究を進めることができず、未使用の研究費が発生した。そのため、今後、磁場効果が見られるマイトマイシンとダウノルビシンに着目して、磁場効果が現れるメカニズムを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
磁場効果が現れるダウノルビシンはアントラサイクリン系の抗ガン剤である。ドキソルビシンなど他のアントラサイクリン系抗ガン剤との構造の違いは少ない。そのにも関わらず、ダウノルビシンにおいて磁場効果が現れる事実は、そのわずかな構造の違いによって磁場効果が生じたことを示している。そのため、次年度では、その構造の違いに着目し、変動磁場の効果が現れるメカニズムを解明するための実験を行う予定である。また、全く構造が異なるマイトマイシンにおいて磁場効果が現れるメカニズムを解明する実験を行う予定である。23年度には未使用の研究費が発生したが、次年度において回転式磁気刺激装置の作製に用いる予定である。この装置は23年度に試作した装置の改良型である。
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