変動磁場による抗ガン剤効能増強作用に着目し、各種の細胞-抗ガン剤系における変動磁場効果を広範に評価し、その作用機構を明らかにすることが本研究の目的である。 本年度は、予備実験において磁場効果が見られたアントラサイクリン系抗ガン剤について、より詳細な実験をin vitroの細胞培養系において行った。用いた細胞は、A549、HCT116、ACHNであり、それぞれの抗ガン剤を対数希釈して添加した細胞培養系において、変動磁場印加群と非印加群における細胞数をSRB法により評価することによって行った。用いた抗ガン剤は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ファルモルビシンとイダルビシンであった。これらの抗ガン剤のうち磁場効果が現れるのはA549-ダウノルビシン系のみであることが確認された。また、その磁場効果は印加時間によって効果が変化した。磁場印加0.5時間と2時間においてはダウノルビシンの細胞内取込量が増加したのに対し、1時間印加では細胞内濃度が低下した。すなわち、ダウノルビシンにおいては取り込み過程および排出過程ともに、磁場が作用することが明らかとなった。この磁場による排出促進作用は、ATP非依存型薬剤排出機構が促進された可能性が示唆された。また、磁場効果が現れるマイトマイシンCに及ぼす磁場効果を調べたところ、磁場はマイトマイシンCの取り込みを増強させるが、排出過程には作用しないことが明らかとなった。
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