研究課題
高齢者社会において今後増加しうる過活動膀胱対策、また難治性の間質性膀胱炎対策として、従来法とは作用機序の異なる新しい治療法の開発が急務である。我々はこれまで、腰・仙髄神経根への低反応レベルのレーザー照射が、過活動膀胱または間質性膀胱炎の機序のひとつである膀胱感覚の異常を是正し、過活動膀胱および間質性膀胱炎を特異的かつ安全に改善しうる可能性を、各モデル動物を用いた基礎実験で示しえた。今回、ヒトへの臨床応用を試み、腰・仙髄神経根への経皮的低反応レベルレーザー照射が過活動膀胱や間質性膀胱炎の安全かつ新しい治療法となるかについて、従来の排尿機能検査に加え、新規手法によって、機能および病態の両側面から検討を行っている。今年度は、これまでの基礎研究の結果と従来の疼痛に対する低反応レベルレーザー療法の知見をもとに、病院内の倫理/治験審査委員会の承認を得た上で、研究の目的に対して理解・同意の得られた過活動膀胱患者、間質性膀胱炎患者を対象に、両側仙骨孔(仙髄神経根)への経皮的低反応レベルレーザー照射療法の安全性と有効性、効果の持続性、さらには照射条件の探索的検討を、自主臨床研究の形式で行った。しかし対象条件を、従来の薬物療法で効果が不十分な症例としたため、正式に試験にエントリーできた症例が数例しかなく、結果が出せていない。ただし、エントリーできた数例における、単回照射前後での排尿機能検査上での変化を観察した結果では、基礎研究の結果と同様、照射後に、蓄尿時の膀胱容量の増大および排尿筋過活動時の最大排尿筋圧の抑制を認めるとともに、排出機能には影響をきたさないことが確認できており、このことは今後の研究結果に期待の持てる結果と考えている。一方で、複数回の照射前後では、芳しくない結果も観察されており、必要に応じて、複数回照射の条件の再考を行わなければならないと考えている。
4: 遅れている
対象症例の条件が厳しすぎたことから、試験にエントリーできる症例に恵まれず、正式なデータを出すまでには至っていない。また複数回照射前後の条件検索も未だ1つの条件での検討のみである。
本年度は、遅れを取り戻すべく、症例を集めるべく努力を行う。レーザーの照射器には、基礎研究で使用したものと同じミナト医科学製のもののほか、より深層部への照射が可能とされるパナソニック製のものの2つを用いて、比較・検討する予定であったが、エントリー件数のことを考え、はじめはどちらか一機器に絞って、研究を行うこととする。また対象症例も、従来の療法をすべて試した症例ではなく、従来の療法のいくつかを試しても効果が不良な症例とし、エントリー件数を少しでも増やすようにする。また並行して複数回照射の条件検索も行う。大枠では、照射、症例ごとに結果を吟味し、毎回、研究継続可能かどうかの評価を慎重に行いながら、進めていく。その上で、臨床研究のデータを積み重ね、ヒトの過活動膀胱、間質性膀胱炎に対する低反応レベルレーザー照射療法の有用性、安全性、効果の持続性、照射条件、病態是正効果などを検討していく。
研究機器の納入の諸事情での遅れ、研究体制作りにも時間を要し、また対象となる症例に恵まれないなか、研究の進行が遅れ、それに伴って未使用額が生じたため。研究期間の延長申請を行い、承認が得られた。このため次年度も引き続き研究遂行することとなった。未使用額はそれらの経費に充てることとする。
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すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)