研究課題
本研究は、網膜撮影用光干渉断層(Optical Coherence Tomography :OCT)画像を処理対象とし、眼科医の診断を支援する知的画像解析システムの開発に関する研究である。臨床医の要望を分析した結果、多様な疾患に関する多数の診断方法があるので、本研究では、2次元画像で広く使用されている境界追跡法と領域拡張法を、3次元OCT画像用に発展させた。すなわち、組織異常の範囲と程度を自動検出し,疾患部の面積と容積を推定する画像診断支援システムを作成し、臨床で計測した画像に対して評価実験を行った。(1)3次元境界追跡法では、従来からのアクティブ・グリッド法を3次元OCT画像の境界追跡に適用するために、網膜の特性を利用した制約条件を新たに設定し、局所領域と特徴量を工夫した。その結果、2次元画像を使用している場合には62%であった網膜境界の抽出精度を、3次元に拡張することにより84%まで向上させることができた。また実測してある治療後の3次元画像から、治療前の3次元画像を人工的に生成し、治療効果を3次元立体画像で表示する新しい技術も開発した。(2)3次元領域拡張法では、3次元関心領域を設定し、適切に抽出するための境界判別条件を多数の実験により設定し、2次元追跡で65.3%であった抽出結果が、79.3%となり、14%の向上を確認することができた。そして、この追跡結果を立体表示することにより、複雑な疾患部の3次元形状が視覚的に容易に理解できるようになった。これらの研究成果より、患者に疾患部を視覚的に伝えるインフォームド・コンセントの手法を提供できることが明確となり、今後、さらに抽出精度を向上させ、医師が使用しやすいヒューマンインタフェースが開発できれば、実際の診断装置に搭載できる機能となると考えている。
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