研究概要 |
心エコー法により評価した運動時の左室拡張機能が心不全患者の運動耐容能に関連していることが報告されているが、心房細動(AF)を伴った患者では、従来のパルスドプラ法による拡張機能評価は困難である。今回、AF例において、スペックルトラッキング法を用いて運動負荷時の心機能評価を行い、運動耐容能指標との比較を行った。対象と方法:インフォームドコンセントの得られたAF患者20名を対象とし、安静時および臥位エルゴメータによる運動負荷(20W、10分)時に経胸壁心エコー検査を実施した。心エコー検査では、断層心エコーにて左室心尖部と心基部の短軸像、左室四腔断面像にて拡張早期の左室流入血流速度(E)、組織ドプラ法にて僧帽弁輪速度(e')を測定した。断層心エコー画像はパーソナルコンピュータにオフラインで転送し、2Dスペックルトラッキング法により左室心尖部と心基部の回転角度(Ap-R、Ba-R)、心尖部、心基部の円周方向のストレイン(ApCS、BaCS)を計測した。心エコー検査実施の3時間以内に自転車エルゴメータによる呼気ガス分析を行い、Peak VO2、嫌気性代謝域値(AT)を測定し、上記心エコー指標との関連を検討した。結果:安静時にはAp-RのみPeak VO2と粗な相関(r=-0.46,p<0.05)がみられた。さらに、安静時から運動時のAp-Rの変化率は、AT、Peak VO2ともに良好な相関が得られ(AT:r=0.62、p<0.05、Peak VO2:r=0.65、p<0.01)、ApCSの変化率もATと相関(r=-0.51,p<0.05)がみられた。一方Ba-R、BaCS、E/e'は安静時、運動時の変化率ともAT、Peak VO2との相関はみられなかった。結論:AF患者において、運動負荷心エコー法による心尖部の回転運動、円周方向のストレインの計測は運動耐容能の評価に有用であることが示唆された。
|