研究課題/領域番号 |
23500558
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
横井 英人 香川大学, 医学部附属病院, 教授 (50403788)
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研究分担者 |
澤田 秀之 香川大学, 工学部, 教授 (00308206)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 音声認識 / オントロジー / 電子カルテ / レポーティングシステム |
研究概要 |
1.医療オントロジーの整備 「腹部超音波所見のオントロジー」と、消化器内視鏡学会のメンバーと共に研究してきた消化器内視鏡の所見用語集である「Minimal Standard Terminology (MST)」の二つのオントロジーを改良し、音声認識に供せられるように整備した。特にMSTについては、消化器内視鏡医と協議を行い、用語の過不足の是正を行った。2.音声認識システムの開発 フリーで研究用途に公開されている音声認識エンジンJuliusを用いて、オントロジー概念を持つ医療用語データに対応した音声入力システムの構築を行った。このシステムは、医療現場を想定した実環境での使用を目指しており、これまでの研究で音声認識を用いる入力部において雑音が大きな問題となることがわかった。特に内視鏡は、体液の吸引・また消化管を拡張して観察するための送気など種々の雑音が発生する。本研究では実環境の使用を想定し、NTT西日本高松診療所の内視鏡検査室での環境音を録音し、雑音を付加した音声ファイルを用いて音声認識実験を行った。 実験の結果、S/N比が26dBから40dBまでは雑音を付加しない場合と同程度の認識率があるが、20dBを超えると雑音による認識誤りが増加することが分かった。入力部で20dB程度まで雑音を抑制して音声認識エンジンに渡すことにより、安定してカルテ入力が可能であることが分かり、今後はノイズ除去手法と合わせてレポーティングシステムの実用化を目指すこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の研究実績の概要にて記述したように、平成23年度に計画していた「医療オントロジーの整備」「音声認識システムの開発」は充分に達成できた。これは3年間の計画のうちの約30-40%であり、達成度は23年度単年度としては100%、全体計画に対しては30-40%であると考える。 「医療オントロジーの整備」については、他のプロジェクトにて研究している、オントロジー作成に用いるための「用語集ハンドリングツール」のブラッシュアップを行うことで、より効率的なオントロジー整備を可能とする環境を作成した。今後、このシステムを用いて臨床家の研究協力を仰ぎ、研究を前進させようと考えている。 また「音声認識システムの開発」の開発についても、その結果を連携できるように、実際の内視鏡レポーティングシステム(電子カルテの一種)とデータ交換形式のすりあわせを行った。このことにより、更に実践的な試行実験を行う環境が整いつつある。23年度は、種々の研究環境整備を進めることができ、大変充実した研究進捗を見ることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に、Juliusを制御するためのシステムのアルゴリズムは実装実験を行うレベルまで完成した。次年度は、以下の各項目に於いてソフトウェア構築作業を続行する。23年度に研究協力を担当した大学院生が卒業したことにより、ソフトウェア開発については外注をする必要が発生する。24年度には、そのような研究体制の変更についてできるだけ速やかに行う必要がある。 1.システムを実際に臨床現場で利用できるようにユーザーインターフェイスへの変更を行う。2.雑音除去の性能向上のためのシステム改良を行う。(※1)3.既存のアルゴリズムを検証し、その再利用性を高める作業を行う。4.実際の電子カルテシステムとのデータ連携を可能とする仕組みの構築を検討する。(※1)このシステムは、医療現場を想定した実環境での使用を目指しており、これまでの研究で音声認識を用いる入力部において雑音が大きな問題となることがわかった。本研究では実環境の使用を想定し、NTT西日本高松診療所の内視鏡検査室での環境音を録音し、雑音を付加した音声ファイルを用いて音声認識実験を行った。 実験の結果、S/N比が26dBから40dBまでは雑音を付加しない場合と同程度の認識率があるが、20dBを超えると雑音による認識誤りが増加することが分かった。入力部で20dB程度まで雑音を抑制して音声認識エンジンに渡すことにより、安定してカルテ入力が可能であることが分かり、今後はノイズ除去手法と合わせてレポーティングシステムの実用化を目指していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、「今後の研究の推進方策」で述べたように、ソフトウェア開発については外注をする必要が発生する。したがって、主任・分担それぞれの研究費の約半額程度を、ソフトウェア開発の外注に使用することを予定している。その他、本研究で作成中の音声認識システムと、内視鏡レポーティングシステム(電子カルテシステム)とを結合をして、より実践的なシステム運用実験を行うための費用が発生する可能性がある。
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