研究概要 |
重度起立性低血圧治療のため、腹筋を電気刺激することにより連続的に収縮させ、血圧を制御する方法を着想した。そこで、三年間の実験的臨床研究により、「腹筋電気刺激によるフィードバック血圧制御装置」の開発を行う。平成24年度は前年度の成果を基に以下を行った。 人工血管運動中枢の動作原理の記述・設計:サーボコントローラの動作原理として,比例・積分補償型のネガティブフィードバックを採用した。H23年度に求めたランダムな腹筋電気刺激に対する動脈圧の応答特性より、平均的な伝達関数H2(f)を二次の低域通過フィルターへの曲線近似法を用いて解析した。求められたH2(f)を用いて,ステップ状の血圧低下に対する血圧サーボシステムの振る舞いを比例補償係数Kp=0, 1, 2,積分補償係数Ki=0, 0.01, 0.05, 0.1, 0.2の組み合わせでシミュレーションし,Kp=1.0, Ki=0.01でシステムがもっとも安定的かつ迅速に血圧低下を代償することが予測された。 刺激強度の問題について:刺激強度と痛みの評価を11例のボランティア(年齢54±10歳、男性2名)で、日本光電社製バイオニック血圧制御システムを用いて行った。超音波検査での平均腹部脂肪厚は14.3±4.0mm, 平均腹筋厚は10.8±2.1mmであり、痛みに耐えられる強度は30Hz, 30-45mAであった。平均血圧は最大2.4mmHg上昇した。以上より最大40mAほどの電流での刺激が可能と考えられるが、症例ごとに評価することが必要と思われた。 デバイスの有効性の検討:重症起立性低血圧を有する自律神経疾患患者1例で、上記システムを装着し、起立負荷検査を行った。腹筋刺激により起立時間を2.3分から、3.2分に延長することが可能であったが、下肢圧迫帯を装着し40mmHgで加圧することにより4.4分まで延長することができた。
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