本研究の目的は、拡散テンソルMR画像から脳の形態情報と機能情報を抽出し、それらを統合的に可視化する手法を開発することである。具体的には、(1)拡散テンソルMR画像における高精度な皮質領域抽出手法の開発、(2)皮質間を結ぶ白質線維束の抽出手法の開発、(3)皮質の機能情報の抽出手法の開発である。最終年度である平成25年度は、(2)の皮質間を結ぶ白質線維束の推定手法の開発と、(3)の拡散MRI画像のADCマップから得られた皮質の機能情報の可視化を行った。 皮質下白質での線維束方向の推定において、部分体積効果を考慮したマルチテンソルモデルを適用し、目的関数を最小とするマルチテンソルモデルのパラメータを推定することで、この領域でのテンソル情報を推定する手法を考案した。 また皮質の機能情報の可視化においては、拡散MRI画像から得られる皮質領域の見かけの拡散係数(Apparent diffusion coefficient:ADC)値のマッピングを行った。この皮質領域のADC値マッピングによる可視化によって、皮質全体におけるADC値の変化を把握することが可能となった。これにより被写体のポジショニングによって磁場の不均一が変化し、これに起因してADC値も変化する可能性があることが新たな知見として得られた。すなわちEcho planar imaging(EPI)法を用いた拡散テンソルMRIから得られるADC値やFA値などの脳機能情報により神経変性疾患などの評価を行う場合、被写体の配置に起因した磁場不均一が影響することがわかった。
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