研究実施機関の過去2年間では、赤血球凝集径の制御が困難であるために、赤血球と同等の粒径を持つ工業紛体を代替試料として用いていた。超音波による血液粘度推定技術を実用化するためには、検出が比較的容易な工業紛体から段階的に人体内の血液へと試料を近づけていく必要がある。 平成25年度では測定試料をブタ血液として検討を行った。本研究は血液を透過した超音波スペクトルが赤血球凝集度によって変動することを利用するものである。このため、まずは赤血球の凝集度を制御する必要がある。しかしながら赤血球凝集制御の手法は確立されていない。よって、25年度ではまずこの課題に取り組んだ。 赤血球凝集の機序がデキストラン線維による架橋であるとの知見より、ブタ血液試料への高分子デキストラン(70kDa以上)溶液の濃度を変化させることによって凝集度制御を試みた。ブタ血液とデキストラン溶液を混合し、一定撹拌後光学顕微鏡によって凝集径を測定した。顕微鏡画像上において、凝集体を包含する楕円の長径及び短径の平均値を凝集径測定値とした。その結果、デキストラン濃度の増加によって平均凝集径も漸増した。 本研究課題の目的は、数段階の平均凝集径を持つ血液試料を用いての超音波スペクトルを測定することによって遂行できる。ブタ血液試料内における赤血球凝集制御技術の確立のみで25年度は終了したが、次段階として血液試料の流れのない状況での超音波スペクトル測定、さらに太い静脈径を持つ模擬血管内での流れ状況下での測定を行う準備を整えることができた。
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