研究課題/領域番号 |
23500564
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
根武谷 吾 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (00276180)
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研究分担者 |
相馬 一亥 北里大学, 医学部, 教授 (00112665)
今井 寛 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (00184804)
小池 朋孝 北里大学, 大学病院, その他 (90523506)
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キーワード | 肺機能 / 電気インピーダンスCT / 電気インピーダンス法 / 非侵襲ベッドサイドモニタリアルタイムモニタ / EIT / ウェアラブルEIT / 呼吸・循環機能の非侵襲測定 |
研究概要 |
これまでのEIT装置は、大型かつ電極装着が煩雑で時間を要していたことから、短時間の簡易測定が困難であった。そこで今年度は、ウェアラブル測定ベルトを含む小型8ch EIT装置を開発した(以下、ウェアラブルEIT装置とする)。ウェアラブル測定ベルトは、洗濯・滅菌が可能な導電性布電極を用いており、ベルトを胸部に巻き、ノートPCと一本のケーブルを接続するだけでEITを測定することが可能となった。 臨床現場における開発装置の有効性を検討するために、ウェアラブルEITベルト10本、導電性布電極ベルト100セット、EIT測定ユニット3セット(Type I)を試作した。さらに、ノートPC単体でEITのリアルタイムモニタリングが可能なアプリケーションを開発した。 この装置を北里大学病院救命救急部に持ち込み、人工呼吸器装着患者に対してEIT測定を試みた。その結果、導電性布電極ベルトに対する皮膚表面および配線パッドとの接触が不安定であること、ベルト交換方法が煩雑、早い換気モードでは絶対的EIT画像を得るには測定間隔が長すぎる(10枚/秒)などの問題が残っていることがわかった。このため、ウェアラブルEIT装置のさらなる改良を試みることとなった。 一方では、従来の電極を用いたEIT測定法で得られた絶対的EIT画像(肺密度)とX線CT値との比較の結果、患者8名において0.66の強い相関性が認められることがわかった。これにより、信号処理ソフトにおいては十分に臨床利用ができるレベルまで開発できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、電気インピーダンスCT (EIT) 技術を応用した肺・循環機能のベッドサイド・リアルタイムモニタの開発を最終目的とする。昨年度の研究では、胸部にベルトを巻き付けるだけでEITが測定できる、ウェアラブルEIT装置を開発とそれを用いたモニタソフトウエアの開発を行った。臨床応用の結果、患者の胸囲や形状によってベルト張力と電極位置が測定に不適切な状態になることがわかった。また臨床スタッフが日常的に装置を管理するには、ベルトのメインテナンスが煩雑であることも報告された。EIT装置は、10枚/秒の画像化を実現するType Iをベルトに組み込んで試用したが、フレームレートが低いために十分な時間分解能の肺密度画像を得ることができず、相対的なEIT画像のみ表示可能となった。このため、呼吸を一時的に停止できる健常者では問題がないが、人工呼吸器装着患者の肺機能評価には不十分な性能であることがわかった。そこで、これまでの研究で開発した60枚/秒を実現するType IIをベルトに組み込んで問題解決をはかる。 一方では、安価なノートPCでEIT、特に肺密度画像のリアルタイム表示を可能とするアプリケーションが開発できた。これは、CPUとGPUの両方を効果的に利用して実現できた技術である。 以上のように、現時点で残っている問題は、ベルト構造を改良することによって多数の患者胸郭への適応をはかることである。この問題が解決次第、北里大学病院集中治療室、北里研究所病院CT検査室、三重大学病院救命救急の3医療機関において臨床評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ウェアラブル測定ベルトの改良を短期間で行い、3つの医療機関で多数の患者に適応できるようにする。具体的には、ベルト素材と構造を変更することによって、幅広い胸囲において布電極との接触状態を良好に保つことを可能とする。また測定回路Type IIの組込を行う。 次に当初の計画通り、北里大学病院集中治療室、北里研究所病院CT検査室、三重大学病院救命救急の3医療機関において臨床評価を行う。具体的には、北里研究所病院ではX線CT値とEITから得られる肺密度との比較を、三重大学付属病院では肺シンチグラフィとEITから得られる肺気量・肺血流との比較を、北里大学病院ではICU患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する治療効果を総合的な臨床評価とEITによる肺機能評価結果とを比較する。それぞれ50症例程度の評価を行うことにより、本研究で開発するウェアラブルEIT装置による肺機能評価法の臨床的有用性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、研究費残高がほとんど無い状態であるが、これまでに購入した部品と学内研究費などの他の研究費を用いて、計画通り研究を遂行する。
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