研究課題
本研究の目的は、バブルリポソームと超音波照射の併用による脳内への薬物・遺伝子デリバリー法を確立することである。そのなかで、昨年度までに、バブルリポソームと超音波照射の併用での脳組織に対する傷害性評価と傷害性の低い超音波照射条件の最適化を行った。その検討において、超音波照射強度 1.2 W/cm2 、超音波照射時間 1分が脳傷害を誘導しない上限の超音波照射条件であることが明らかとなった。そこで、本年度はこの超音波照射条件での脳内への遺伝子デリバリーおよび脳内での遺伝子発現部位についてβ-ガラクトシダーゼ発現プラスミドDNAを用い検討した。その結果、脳全体で発現が確認できた。特に海馬や視床において強い発現が認められた。このバブルリポソームの製剤化を考えた場合、長期保存に耐えうる製剤化が必要となる。一般にマイクロバブルは凍結乾燥製剤となっているため、バブルリポソームに関しても凍結乾燥製剤として保存安定性を確保することが可能になると思われる。そこで本年度は、バブルリポソームの凍結乾燥製剤化の可能性について検討した。リポソームの凍結乾燥に利用されているショ糖溶液にバブルリポソームを懸濁して凍結乾燥したところ、きれいな凍結乾燥ケーキが作成できた。また、これを復水したところ凍結乾燥前とほぼ同等の粒子径およびガス保持量のバブルリポソームになることが明らかとなった。このことから、バブルリポソームの凍結乾燥製剤化が可能であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の計画は、昨年度設定された超音波照射条件での脳内への遺伝子導入における遺伝子導入部位の特定およびバブルリポソームの安定保存を可能とする製剤の開発であった。今回の検討で、脳内の遺伝子導入部位の特定および凍結乾燥製剤化が可能となったため、当初の目標をほぼ達成できたものと考えている。
本年度の検討では、βガラクトシダーゼ発現プラスミドDNAを利用して脳内に超音波を用いて遺伝子導入を行った。この時、脳全体での発現が認められ、特に海馬や視床での発現が高かった。今回の遺伝子導入では、一般的に考えると脳の血管内皮細胞に主に遺伝子が導入されると考えられる。そこで、今後は海馬や視床のどの細胞に遺伝子が導入されているのかを免疫染色などを併用して遺伝子発現細胞の同定を行う。また、バブルリポソームの凍結乾燥製剤化が可能となったので、実際に保存安定性などの評価を行う。これらのデータを集積し、最終的に脳内への超音波デリバリーに最適なバブルリポソーム製剤に仕上げていく。
次年度は細胞内への遺伝子導入効率を評価するためにサーマルサイクラーを購入し、遺伝子導入量の定量を行う。このサーマルサイクラ―を購入するため、本年度の研究費を一部繰り越した。さらに、次年度は脳内の細胞を免疫染色し細胞の特定をおこなうため、実験動物の購入や免疫染色用の抗体を購入する予定である。凍結乾燥製剤に関する検討では、凍結乾燥に必要なバイアルなどの消耗品を購入する。また、当該研究分野の最新情報の収集および意見交換のため、関連学会で研究成果を公表するために旅費を計上する。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
Biomaterials.
巻: 34 ページ: 501-507
10.1016/j.biomaterials.2012.09.056.
薬学雑誌
巻: 132 ページ: 1383-1388
PLoS One.
巻: 7 ページ: e44080
10.1371/journal.pone.0044080.
Mol Pharm.
巻: 9 ページ: 1834-1840
10.1021/mp200554c.
J Ophthalmol.
巻: 2012 ページ: 412752
10.1155/2012/412752.
巻: 9 ページ: 1017-1023
10.1021/mp200606d.
J Drug Target.
巻: 20 ページ: 355-363
10.3109/1061186X.2012.660162.
Hepatology
巻: 56 ページ: 259-269
10.1002/hep.25607.
J Control Release.
巻: 160 ページ: 362-366
10.1016/j.jconrel.2011.12.003.
Int J Pharm.
巻: 422 ページ: 504-409
10.1016/j.ijpharm.2011.11.023.
巻: 422 ページ: 332-337
10.1016/j.ijpharm.2011.11.001.
http://www.pharm.teikyo-u.ac.jp/