研究課題
本研究の目的は、ナノバブル(バブルリポソーム)と超音波を併用した脳内への低侵襲的かつ脳特異的な遺伝子・薬物デリバリー法を開発することである。平成23年度には、バブルリポソームとプラスミドDNAを全身投与後に脳に対して経頭蓋的に超音波照射することで、脳選択的な導入遺伝子の発現が認められることを見出した。平成24年度には、本遺伝子導入法の脳組織傷害性や遺伝子発現部位について評価した。この検討において、超音波照射強度が1.2 W/cm2、超音波照射時間1分以内であれば、脳に対して傷害がないことを明らかとした。さらに、脳への遺伝子導入に対して最適化された超音波照射条件を用い、脳内の遺伝子導入部位についてβガラクトシダーゼ発現プラスミドDNAを用いて評価した。その結果、脳全体での発現が確認できた。特に海馬や視床において高い発現が認められた。そこで、平成25年度の検討において、バブルリポソームと超音波照射に併用による脳への遺伝子導入において、どのような細胞種に遺伝子が導入されているのかを検討した。蛍光たん白質であるビーナスを発現するプラスミドDNAをバブルリポソームと超音波照射の併用により脳内に遺伝子導入し、その後脳を回収し、海馬や視床でのビーナスの発現部位を各種細胞に対するマーカーを用い免疫染色法により評価した。その結果、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、血管内皮細胞でビーナスの発現が認められた。このように血管内皮細胞の外側にある脳実質細胞に対しても遺伝子導入が可能であった。このことから、バブルリポソームと超音波照射の併用は、血液―脳関門を一時的に開放できることが示された。このことから、本方法は血液―脳関門透過性を一時的に向上させうる新たな脳内への遺伝子・薬物導入ツールとして適用可能になるものと期待される。本研究では、そのコンセプト証明をすることができたと考えている。
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