研究課題/領域番号 |
23500570
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
深井 俊夫 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (10057755)
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研究分担者 |
弓田 長彦 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (40191481)
岩瀬 由未子 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (00521882)
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キーワード | アポトーシス / 音響化学療法 / 超音波 / 活性酸素種 / 一重項酸素 |
研究概要 |
がん細胞ではアポトーシス誘導能が、消失あるいは減弱しているために異常増殖すると考えられている。組織深部到達性に優れる超音波によって腫瘍集積性薬物を抗腫瘍活性化する音響化学療法によって腫瘍組織に局在的にアポトーシスを誘導することが可能であれば、ネクローシスを経由しない副作用の少ないがん治療が期待される。本研究では、これまでの技術では困難であった腫瘍組織に選択的にアポトーシスを誘導することを目的に、超音波照射により音響化学的に活性化しアポトーシスを誘導する薬物を用い腫瘍選択性を備えた新規がん治療法の開発を目指す。 昨年度までに、超音波単独、またはポルフィリン誘導体との併用による抗腫瘍効果を、培養細胞で確認する。超音波と併用することにより殺細胞効果が発現、または増強されるポルフィリン誘導体をスクリ-ニングを行った。ATX-S10、ポルフィーマーナトリウム、レザフィリン及新規ポルフィリン誘導DCPHなどのポルフィリン誘導体が殺細胞効果を発現、または増強することが確認された。 次に超音波と併用することによりアポトーシスが誘発を増強するポルフィリン誘導体をスクリ-ニングを行った。アポトーシスの誘発の判定は, 形態観察およびDNAラダーの検出により行い、ATX-S10、ポルフィーマーナトリウム、レザフィリン及新規ポルフィリン誘導DCPHなどのポルフィリン誘導体がアポトーシス誘導することの確認と電子スピン共鳴(ESR)によって音響化学的抗腫瘍効果に関与する活性酸素種の同定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超音波と併用することによりアポトーシスが誘発を増強するポルフィリン誘導体をスクリ-ニングを行った。アポトーシスの誘発の判定は, 形態観察およびDNAラダーの検出により行い、ATX-S10、ポルフィーマーナトリウム、レザフィリン及新規ポルフィリン誘導DCPHなどのポルフィリン誘導体がアポトーシス誘導することが確認された。超音波の作用には物理作用と、キャビテ-ションを介して発生する活性酸素種による化学作用とがあると推定されるため、活性酸素種消去剤添加のアポトーシス誘導に対する影響を検討した。OHラジカルの消去剤であるマンにトールとスパーオキサイドラジカルの消去剤であるSODの添加は併用によるアポトーシス誘導に対し有意な抑制作用を示さなかったのに対し、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波とポルフィリン誘導体併用処置のアポトーシス誘導を著しく抑制することを認め、アポトーシス誘導機序における一重項酸素の関与を確認した。次にアポトーシス誘導におけるシグナル経路の同定を行う目的でイニシエーター・カスパーゼであるカスパーゼ-3の活性化を経時的に測定した。
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今後の研究の推進方策 |
形態観察およびDNA断片化のラダーの検出からATX-S10、ポルフィーマーナトリウム、レザフィリン及新規ポルフィリン誘導DCPHなどのポルフィリン誘導体がアポトーシス誘導することが確認されたので、本年度は、超音波強度と薬物濃度を変化させ形態観察およびDNA断片化により、ポルフィリン誘導体のアポトーシス誘導を比較する。スカベンジャ-によるアポトーシス誘導に対する阻害効果によりそれら寄与を確認する(担当 深井、弓田・岩瀬) 上述した実験と並行して、アポトーシス誘導におけるシグナル経路の同定を行う。昨年度測定したカスパーゼ-3に加えイニシエーター・カスパーゼであるカスパーゼ8および9の活性化を経時的に測定する。(担当 深井、弓田)
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次年度の研究費の使用計画 |
横浜薬科大学薬物動態学研究室では、申請した研究内容を行うための設備はほぼ完備されている。そのために、今回の研究経費は消耗品、実験動物の購入、成果の論文掲載費および学会等での発表に関わる旅費に当てられる予定である。今回の研究経費は消耗品と実験動物の購入に当てられる予定である。本研究で使用するポルフィリン誘導体の購入または依託製造と実験動物での治療効果を確認するに多くの経費を使用する予定である。この理由として、超音波の生体作用は薬物により大幅に増強され、そのポルフィリン誘導体の音響化学活性とアポトーシス誘導作用の検出が本研究のキーとなることと超音波の抗腫瘍効果がポルフィリン誘導体の導入により増強されることを動物実験によっても実証する必要があることが挙げられる。電子スピン共鳴スペクトルなどの機器分析によるデータの回収、および細胞培養等を用いたポルフィリン誘導体のスクリーニングやアポトーシス誘導など機能解析によるメカニズム解明にかかる試薬等が残りの多くを占める予定である。しかしながら、これらの購入には残額を充てることで十分に賄えると考えている。その他の経費として、本研究の成果を報告するための学会発表、および論文投稿にかかる経費を挙げる。
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