研究課題
がん細胞ではアポトーシス誘導能が、消失あるいは減弱しているために異常増殖すると考えられている。組織深部到達性に優れる超音波によって腫瘍集積性薬物を抗腫瘍活性化する音響化学療法によって腫瘍組織に局在的にアポトーシスを誘導することが可能であれば、ネクローシスを経由しない副作用の少ないがん治療が期待される。本研究では、これまでの技術では困難であった腫瘍組織に選択的にアポトーシスを誘導することを目的に、超音波照射により音響化学的に活性化しアポトーシスを誘導する薬物を用い新規がん治療法の開発を目的とする。昨年度までに、超音波と併用することによりアポトーシスの誘発を増強するポルフィリン誘導体のスクリーニングを行い、ATX-S10、ポルフィーマーナトリウム、レザフィリン及新規ポルフィリン誘導DCPHなどのポルフィリン誘導体がアポトーシス誘導することの確認と電子スピン共鳴(ESR)によって音響化学的抗腫瘍効果に関与する活性酸素種を推定した。今年度は、アポトーシス誘導におけるシグナル経路の同定を行う目的でイニシエーターおよびエフェクターカスパーゼであるカスパーゼ-3、8および9の活性化を経時的に測定した。これに加え、活性酸素種消去剤添加のアポトーシス誘導、カスパーゼ-3、8および9の活性化に対する影響を検討した。OHラジカルの消去剤であるマンニトールとスパーオキサイドラジカルの消去剤であるSODの添加は併用によるカスパーゼ-3、8および9の活性化に対し有意な抑制作用を示さなかったのに対し、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波とポルフィリン誘導体併用処置のアポトーシス誘導、カスパーゼ-3、8および9の活性化を著しく抑制することを認め、アポトーシス誘導機序における一重項酸素の関与を確認した。
すべて 2013
すべて 学会発表 (3件)