研究課題/領域番号 |
23500577
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
福島 順子 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40208939)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脳血管障害 / 片麻痺 / 視覚フィードバック / イメージトレーニング / 座位バランス / リハビリテーション |
研究概要 |
脳卒中のリハビリテーションは主に日常生活動作(以下ADL)の自立を目標に行われる。ADLの多くは座位で行うため,座位バランスが良好であることが求められる。良好な座位バランスの再獲得を目的に座位バランストレーニングを行った。また、近年イメージトレーニングを脳卒中のリハビリに用いるようになってきた。従って、視覚的フィードバックとイメージ,運動を組み合わせた座位バランストレーニングを行い,脳卒中片麻痺患者の座位バランスに対する効果を調べることとした。脳卒中片麻痺患者16名を2群に分け、介入群には、椅子座位で写真を見ながらメトロノームに合わせて体幹前屈・側屈運動をイメージし,その後身体を動かしてそれらの運動を実際に行い、トレーニング前後の変化を非介入群と比較した。 トレーニングにより,安静時の麻痺側座圧が増加し対象に近づいたが、前屈位においては,麻痺側座圧が減少した。麻痺側への側屈位の場合,運動角度は増加したが,麻痺側座圧は変化がなく,健側への側屈位では運動角度は増加し,麻痺側座圧が減少する傾向があった。このことから,視覚刺激とイメージ,運動を組み合わせた座位バランストレーニングは短時間でも一定の効果があることがわかった。 右片麻痺患者では,安静時の麻痺側座圧が増加したが,左片麻痺患者では,安静時の麻痺側座圧に変化はなく、前屈位の麻痺側座圧は減少し,運動角度に変化はなかった。麻痺側への側屈では運動角度は増加したが、座圧の有意な変化はなく、健側への側屈では角度は増加し、麻痺側の抜重は改善した。従って、右片麻痺の方が左片麻痺よりも効果が顕著で、また、発症後経過日数が短いほど効果があった。 以上の成果について、北海道理学療法士会、日本ニューロリハビリテーション学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象は某病院に入院中,および介護老人保健施設に通所・入所中で理学療法を受けている脳卒中片麻痺患者16名で、適合条件は,静的座位保持を背もたれなしで、かつ自立して30秒以上可能であること,聴覚・言語理解良好,長谷川式簡易認知機能スケール20点以上,検査に協力的であることとしたため、適合する脳血管障害の症例数は限定された。しかし、予想した程度の人数は確保できて、短時間でも一定の効果が見られたので、初期の目的は達成できたと思われる。 今後の課題としては、イメージトレーニングのみの効果を見ることのためには、非介入群、イメージトレーニング+運動療法群の他に、運動療法のみを行う群を加えて3群で比較することが必要である。そのため、さらに新たな症例で追加実験を行う必要がある。 さらに、立位でのバランスを足圧で測定する予定であったが、適当な症例がなく行っていないので、次年度に行う予定である。 また、イメージを被験者が本当に行ったのか、イメージトレーニングの効果が脳にどのような影響を与えているかを確認することは非常に困難である。そこで、イメージトレーニングの前後で、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を測定することにより、イメージ中に賦活する脳部位を測定しなければならない。これについても平成24年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
対象患者のリクルートに関しては、平成23年度と同様の施設で行うことが可能である。座位バランストレーニングの運動療法群には前屈または側屈の運動を実際に行わせる。椅子座位にて座面に圧分布測定装置を設置し、座圧の分布は前方のコンピュータディスプレイに表示され,被験者が確認できるようにする。安静時の座圧を確認し,圧が左右対称になるように被験者自身で修正させ、次にメトロノーム(速さ30bpm)に合わせて前屈運動,左右交互の側屈運動を行う。座圧,腰椎-骨盤の運動角度を記録する。座圧についてはストレンゲージを使用した圧分布測定装置(FSA4.0,タカノ社製 現有)を用いる。腰椎・骨盤の運動角度には3次元位置測定装置(3-Space ISOTRAK,Polhemus社製 現有)を第1腰椎と仙骨にセンサーを設置する。 立位バランストレーニングについては、イメージトレーニング+運動療法群、運動療法のみの群、非介入群の3群で足圧を、圧分布測定装置(FSA4.0,タカノ社製 現有)を用いて記録し、コンピューターディスプレイ上に表示させ,被験者が確認できるようにする。イメージトレーニング+運動療法群では、メトロノームに合わせて体幹前屈・側屈運動、側方へのステップをイメージし,その後体を動かしてそれらの運動を実際に行い、トレーニング前後で非介入群と比較した。運動療法のみの群では、運動のみを行い、3群間で比較する。 イメージトレーニングを行った群のうち可能な症例では、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて、イメージトレーニングを開始する前後で賦活する脳部位を測定する。fMRIに関しては、学内共同利用施設である「医歯学総合研究棟」の研究用MRI機器を使用することが可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度には1,500,000円を計上していたが、被験者に対する謝礼として病院側の希望が物品でお渡しするようにとのことであったので、他の財源で物品を購入した。そのため140,934円の残額を生じた。今後はこの残額を英文校閲費、論文投稿料、カラーチャージ、オープンアクセス料、別刷代に使用予定である。
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