脳血管障害後の患者にとって、十分な座位バランスは重要である。最近、あたかも患者自身が身体を動かしたかのようにイメージするイメージトレーニングが脳血管障害の患者に応用されてきた。さらにイメージ単独の場合よりも、イメージの後で同様の運動を実際に行う方がより効果的であると言われている。しかし、座位バランスに対するこのトレーニングの効果を調べた報告がない。そこで、この研究の目的は運動イメージと同様の運動を繰り返し行うトレーニングを片麻痺患者において行い、その効果を調べることとした。 今年度は、昨年度までのイメージトレーニングプラス運動トレーニング群と非介入群に加えて、運動トレーニングのみの群において実験を行い、イメージトレーニングの効果を調べた。これら3群の間で比較した結果を次にまとめて示す。 某病院及び介護老人保健施設に通所、または入院中で理学療法を受けている脳血管障害による片麻痺患者46名を3群に分けた。イメージトレーニングのみでは、患者が正しく行ったかどうかの評価が難しいところがあるので、1)イメージトレーニングとそのあとで同様の運動を行った群、2)運動トレーニングのみを行った群、3)非介入群とした。患者の適合条件は背もたれなしで30秒以上座位保持が可能であること、聴覚や言語理解が良好で認知症のない患者とした。座位でストレンゲージを利用した座圧、第一腰椎の仰角、回転角度を測定した。イメージ群は座位で、体幹前屈、側屈運動をイメージし、その後自ら同様の運動を行った。この結果を評価のみの非介入群、イメージを行わない運動のみの群と比較した。その結果、イメージ群、運動のみの群、非介入群の順に、座圧の対称性、回転角度の改善が見られた。右麻痺患者のほうが、左麻痺患者よりも改善が顕著であった。このことは、イメージトレーニングの効果をあらわすものと考えられる。
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