研究課題/領域番号 |
23500581
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
細 正博 金沢大学, 保健学系, 教授 (20219182)
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キーワード | 病理 / 関節拘縮 / 脊髄損傷 / 動物実験 |
研究概要 |
ラット脊髄損傷モデルを用いて、正常コントロール群、脊髄損傷群、脊髄損傷+関節固定群間の比較を行ったところ、脊髄損傷群では、損傷1週での滑膜では、微小血管の拡張およびうっ血像、滑膜の乳頭状増生が確認された。損傷2週では、軽度の小型リンパ球の浸潤を認めた。これらの変化は損傷2週でさらに進行し、増加を認めたが、損傷4週では減少に転じ、8週、12週では減少された状態が維持されていた。関節軟骨の状態として、損傷1週において紡錘型細胞からなる膜状の組織が大腿骨および脛骨の軟骨表面を覆うように増生を認めた。この増生は損傷2週でさらに進展を認めたが、損傷4週では損傷2週と同様でそれ以上の増生を認めなかった。損傷8週および12週では、増生変化の減少を認めていた。損傷1週の脂肪細胞は、対象群と比較して脂肪細胞に変化を認めなかった。損傷2週では脂肪細胞の萎縮および線維化を認めた。損傷4週では正常化傾向に転じ、損傷8週および12週の脂肪細胞は、軽度の萎縮で維持されていた。このような組織学的変化は、脊髄損傷+関節固定群においても、ほぼ同様の結果となり、先行研究にて、ラット関節拘縮モデルで見られた、関節軟骨の変成と置換、軟骨表面を覆う膜状組織と滑膜の癒着、関節空の狭小化、脂肪体の脂肪細胞の萎縮と線維化といった進行性の変化は、ごく軽度にとどまるか、ほとんど観察されなかった。 以上の結果から、ラット関節拘縮モデルで観察されていた進行性の病的変化には、神経系が関与しており、神経系の関与により病的変化が引き起こされること、逆に神経系の関与を排除すると、この病的変化が抑制されることが示された。 今後は、この関与の実態について、それが感覚入力に依存したものなのか、自律神経に依存したものなのか、あるいは神経系のコントロールを離れることによる、局所環境的な要因なのかについての見当が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した如く、ラット脊髄損傷モデル、ラット拘縮モデルを組み合わせることにより、関節拘縮時の関節構成体に起こる進行性の病的変化に、神経系が深く関与していることが示され、研究の目的は概ね達成されつつある。後はこの結果を論文発表し、かつ国際学会で発表することで、研究者の間でのディスカッションを行って行くことで、さらなる知見を深めたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、この神経系の関与の実態がどのようなものなのか、感覚入力の喪失によるものなのか、自律神経の異常によるものなのか、それとも神経系のコントロールの喪失そのものに伴う、局所環境の変化(能動的or受動的?)に伴うものなのか、新たな仮説の元に、その検証が可能な実験系についての検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の如く、予備実験を始めるとともに、論文発表及び、国際学会( 6th WCPT-AWP & 12th ACPT Congress 2013, Taiwan)での発表を予定している。
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