研究課題/領域番号 |
23500586
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
村田 潤 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00304428)
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研究分担者 |
村田 伸 西九州大学, リハビリテーション科学部, 教授 (00389503)
田平 隆行 西九州大学, リハビリテーション科学部, 准教授 (50337432)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 手指感覚 / 自律神経性循環調節 / 脳血流量 / 皮膚血流量 / 点字課題 / 血圧 / 心拍数 / 健常成人 |
研究概要 |
本研究は,循環調節能を指標とする新しい客観的な感覚機能評価法の開発に向けた取り組みである.本年度は,手指循環動態および脳皮質活動同時計測システムの開発と手指感覚情報処理時にみられる手指循環動態と脳皮質活性の変化について調査を実施した. 方法:実験は,5名の健常成人で実施され,2つのプロトコールから構成されていた.(1)被験者は机座姿勢をとり,10分の安静の後,右手示指を使用して1つの点字プレート(幅3mm,高さ1mmの凸を点字模様に従って配列)の解読作業を15秒間行った.もう一つは対照実験として,(2)点字模様のない平らなプレートを(1)の場合と同じ動作で触れさせた.この2つの課題施行時にみられる手指皮膚血流量および心拍数,血圧の変動を観察した.手指皮膚血流量計測にはレーザー血流計を使用した.またこれらの測定パラメータに加えて,手指感覚識別時の脳皮質活性を推定するために,近赤外線方式脳血流評価システム(hemoencephalography)を用いて前頭葉部の脳組織酸素動態を同時計測した. 結果と考察:心拍数および血圧は課題遂行時に大きな変化は生じなかったが,手指皮膚血流量は点字解読中に減少した.これらの成績は先行研究と同様の傾向であった.一方で,前頭葉部の脳血流量は点字模様のないプレートに接触している時に変動しなかったが,点字解読中に増加した(3.6±1.6%).その変化は,解読開始からゆっくりと大きくなり,最大反応値までの到達時間は12.2±3.8秒であった.この脳血流の経時的変化は皮膚血流応答と似ていた.これらの研究成績は,高位中枢でおこなわれる点字解読課題への注意が前頭葉部の脳活動に反映することを示唆する.さらに,その影響は末梢部(手指)で起こる皮膚血流応答との関連性が示される可能性がある.来年度実施する高齢者群のデータと合わせ,前述の関連性について精査したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手指感覚識別時にみられる手指循環動態とその制御に関連する高位中枢の脳活動との関連性について示唆するデータを得ることができたが,データサンプル数が少なく,関連性に関する検討が今後の課題として残されている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,脳血流測定を限定的(前頭葉部)にし,データサンプル数を増加させ,手指感覚情報処理時にみられる手指循環動態と脳皮質活性の関連性を明らかにしたいと考える.
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次年度の研究費の使用計画 |
年度は,実験遂行に必要となる計測機器の消耗品,被験者謝金,および研究成果発表のための旅費等を計上する.
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